事例集

2022.09.30 06:00

生産管理システムと高性能カメラで生産性低下の原因まで把握、ものづくり進化に貢献 ダイドー(大阪府)

生産管理システムと高性能カメラで生産性低下の原因まで把握、ものづくり進化に貢献 ダイドー(大阪府)
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住宅用建材を中心に、アシストスーツや加工機械など幅広いものづくりを手掛ける大阪府河内長野市の株式会社ダイドー(DAYDO)が、ICTを活用し生産工程の徹底した「見える化」に取り組んでいる。独自開発した生産管理システムとカメラを組み合わせるなど様々な手法で、データを軸にしたものづくりを進化させている。

大阪府河内長野市で住宅用建材のメーカーとして発展

71年の歴史を持つダイドーは大阪府南東部の河内長野市に本社を構える。設立当初の農業機械用部品から大手住宅メーカーに納入する住宅用建材に生産の軸足を移して発展し、大阪府、宮城県、栃木県、静岡県、山口県の5ヶ所に工場を持つ。約300人の従業員のうち半数が、工場を併設した本社に勤務している。約20年前から生産管理や設計の分野で積極的なICTの設備投資に取り組み、2010年に6代目の追田尚幸(おいた なおゆき)社長が就任してから、その動きを更に加速している。

2020年に社名を大同化工機工業からダイドーに

「DX(デジタルトランスフォーメーション)は、想像以上のスピードで変化するこれからの時代に中小企業が生き残っていく上での鍵になると思っています。ICTを活用して業務を効率化することで、人間だからこそできる高い付加価値を生み出す仕事に社員を集中させることが可能になります。生産性を高めることで会社の成長を図り、その成果を社員に還元する。このような好循環を生み出していきたいと考えています」と追田社長は話す。

ダイドーは2020年、製造会社(大同化工機工業)と販売会社(ダイドー)を合併し、ダイドーに社名を統合した。「これまで蓄積してきた経営資源を土台に、ICTを活用することで社会のニーズに応える課題解決企業として飛躍していきたい」と追田社長は意欲的に語った。

追田尚幸社長

追田尚幸社長

エクステリア、アシストスーツで事業領域を拡大

会社の事業領域を拡大しようと近年、季節やライフスタイルに合わせてアレンジしやすいエクステリアの独自ブランド「空間ソムリエ」事業の拡大のほか、上腕を支えるアシストスーツ「TASK」の販売に力を入れている。

2019年に販売を開始したアシストスーツは、腕を上げて仕事をすることが多い建築や農業 など現場で働く人たちの負担軽減を目的に、住宅用建材で培ったバネ関連の技術を生かして開発した。装着して腕を上げる動作をするとスーツのアシスト機能が作動し、上腕で行う作業の負担を軽減する。2019年に河内長野市を中心に撮影が行われた映画『鬼ガール!!』の制作に協賛した際には、撮影隊にアシストスーツを提供し、注目を集めた。その後、女性も使いやすいように軽量化などの改良を加え、農家や建設会社向けの販売が順調に伸びている。今後、腕の機能回復のリハビリテーション用など、さまざまな分野での活用も視野に更なる改良に取り組む方針だ。

ショールームで展示しているアシストスーツ「TASK」

ショールームで展示しているアシストスーツ「TASK」

独自開発したアルミ切断機を外部にも販売

販売も行っている独自開発したアルミ切断機

販売も行っている独自開発したアルミ切断機

生産設備の技術開発にも力を入れている。工場で使用しているNC制御のアルミ切断機は自社開発したものだ。数十万件の加工データの登録が可能で、部品品番の読み込みはバーコードで瞬時に行える機能を備える。20年前に初号機を完成させてからバージョンアップを重ね、外部への販売も行っている。「自社で使って生産性を実証していることが最大のセールスポイントです。製品の販売だけでなく、生産効率化についてのコンサルティングにも力を入れていきたい」と追田社長。

加工、検査、出荷、検品を一気通貫でデジタル管理

本社に設けているショールームでは、収納ラックと扉が連動した昇降機能付きキャビネットやアシストスーツが並ぶ。これらの幅広いものづくりを支えているのが、5年前に自社開発した加工(K)、検査(K)、出荷(S)、検品(K)までの過程をデジタル管理するシステム「KKSK」だ。

昇降機能付きキャビネット

昇降機能付きキャビネット

KKSKを開発した経緯について「生産性を向上する上で不可欠な一気通貫の生産方式を確立することが最大の目的でした」と製造部門、情報システム部門の管掌と品質保証部長を務める木村孝士執行役員は説明した。

KKSKができたことでそれまで紙に印刷して現場に配布していた指示書と図面をデジタル化し、各担当者のパソコンやタブレット端末に配信できるようになった。加工した部品の管理はバーコードで簡単に行えるようにしている。検査で基準と異なる部品が出ればアラートが出るので、加工不良品はその時点で取り除くことができる。

木村孝士執行役員

木村孝士執行役員

KKSKはクラウドサービスを通じて全国の工場の各現場担当者が利用できるようにしている。工程管理のデジタル化によってものづくりのスピードと精度が向上したことに加え、オフィス、生産現場でのペーパーレス化が進むなど様々な効果を生み出している。

生産管理システムと高性能カメラを組み合わせてデータを収集

更にダイドーはKKSKによって蓄積したデータと高性能カメラを組み合わせることで、製造ラインの徹底した「見える化」を推進している。

生産現場で設置しているカメラ

生産現場で設置しているカメラ

「管理者が工場を四六時中巡回して、各担当者の作業を確認するのは手間もかかりますし、現実的ではありません。KKSKとカメラを使えば管理者や現場の担当者に負担をかけることなく、生産に関するデータを自動的に収集することができます」と木村執行役員。

各工程の担当者の人時生産性を分析する際に、データによる作業実績と録画による映像記録を照らし合わせることで、生産性が下がった時の原因を明らかにできるようになった。

生産管理システムだけではわからない、生産性が下がった原因を明らかに出来、管理者と現場担当者の双方が納得して改善策を検討

「生産性の低下をもたらす小さな原因を見逃していると、積もり積もって大きなトラブルにつながりかねません。生産性が下がった時は、担当者が作業に集中できない状況が発生していたことが多く、データと映像記録のおかげで、管理者と担当者の双方が納得した上で建設的に改善策を検討することができるようになりました。日々、データを基にした改善に取り組むことでダイドーの生産現場を更に進化させていきたい」と木村執行役員は話した。

蓄積したデータと映像は、生産工程の検証だけでなく、製品を販売した後に不具合などのトラブルが発生した際の原因究明に活用することも可能だ。トラブルの原因が生産過程にあるのかないのか。あった場合はそれが何なのかを確認し、その後の対応の材料にすることができる。

場所によって作業支援カメラシステムと生産工程可視化システムを使い分け

記録にあたっては、作業の内容にあわせて複数の機器を使い分けている。

製品の組み立て前に使用する部品をあらかじめ整えるキッティング作業の現場では、パターンマッチングに優れた作業支援カメラシステムを使っている。カメラが検出しやすいように、部品を並べるトレイの色や照明の影響を受けないようカバーをするなど工夫を施して活用している。

作業支援カメラシステム

作業支援カメラシステム

複数のカメラを使う生産工程可視化システムは、1人で組み立てを担当するセル生産の現場で活用している。生産工程可視化システムは、あらかじめ画像に指定しておいた「検知枠」の基本画像と実際の画像との変化を検知する機能を持っている。最大8台のカメラと接続することが可能で、多角的な視点から作業の様子を記録することができる。異常を検知した時間帯に合わせて映像データを確認できる機能も備える。生産工程可視化システムは詳細な分析が可能なことから、様々な現場で活用していきたいという。

生産工程可視化システムの画面

生産工程可視化システムの画面

管理や営業でもテレワークやWeb会議を上手に活用

管理や営業部門 生産現場以外でもICTを積極的に活用している。営業、設計、情報システムなどの担当者は、出勤・リモートワークどちらでも働くことができる、ハイブリッドな環境を構築しており、勤怠の記録や申請をシステム上で管理し、毎朝の朝礼も全社オンラインで参加している。

コロナ禍以降、営業活動や取引先との打ち合わせは積極的にWeb会議を活用するようにしている。結果的に出張の回数が減って経費の節減につながっているだけでなく、移動に時間を取られない分日程の調整が行いやすくなり、取引先とのコミュニケーションや新規開拓により多くの時間をあてることができるようになったという。

「オンラインでのコミュニケーションを経験したことによって、対面でコミュニケーションを取る大切さと効果を改めて認識することができました。リアルとリモートをバランスよく組み合わせることで、人間同士のコミュニケーションが深化することを実感しています」と追田社長は明るい表情で話した。

ダイドーの本社の外観

ダイドーの本社の外観

テレワークとICTで多様な働き方を選択できるようにしたい

今後は、ICTを活用して、本社や支社と離れた地域で設計や営業などの業務を担当するテレワーク社員を増やしていきたいと考えている。「ICTのおかげで時間と場所に制約されない柔軟な働き方が可能になりました。職場と自宅が近接していればいるほど、日々の仕事を終えた後のプライベートの時間を充実させることができます。社員には子育てや介護など家族のために使う時間や地域活動、余暇も大切にしてほしい。様々な働き方が選択できる会社にしていきたいと考えています」と追田社長は話した。

「DXは本当に奥が深い。様々な取り組みを進めてきましたが、まだ三合目程度です」と話す追田社長。今後、生産工程の更なるデジタル化を進め、データサイエンスやAIの活用を積極的に進めていきたいという。更なる高みを目指してダイドーの挑戦はこれからも続く。

事業概要

会社名

株式会社ダイドー

本社

大阪府河内長野市上原町250-2

電話

0721-53-7201

設立

1951年2月

従業員数

291人

事業内容

住宅関連部材、住宅設備機能商品、住宅生活雑貨商品、太陽光関連部材、設備機械、アシストスーツの生産、販売

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