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事例集
2022.09.13 06:00
ICTを活用してベトナムの高度人材を育成、海外展開や新事業で成長を図る 豊明(奈良県)
この記事に書いてあること
制作協力
産経ニュース エディトリアルチーム
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奈良県西部の北葛城郡王寺町に本社を置く建材販売施工会社、株式会社豊明が、高い日本語能力と知識を持ったベトナム人の採用とICTを活用した育成に力を入れている。デジタル技術の進化とグローバル化が加速するこれからの時代に対応できる海外人材をそろえることで、会社の成長を推進していこうとしている。
4000キロ離れた独立子会社とインターネットで常時接続
豊明の本社オフィスは、約4000キロ離れたベトナム・ホーチミン市にある独立子会社、株式会社豊明ベトナムのオフィスとの間をインターネットで接続し、大型モニターで互いの様子を常時見ることができるようにしている。豊明ベトナムでは9人のベトナム人が勤務し、設計や貿易の業務に携わり、まるでひとつのオフィスで仕事をしているかのように日本人社員とコミュニケーションを取り合っている。本社でも日本の大学を卒業した4人のベトナム人が在籍し、設計、施工、営業といった様々な部門で日本人社員と同じように活躍している。豊明・豊明ベトナムの社員の中で海外人材が占める割合は4割に上る。
「物理的な距離を取り払うデジタル技術の発展によって、海外の優秀な人材を中小企業が採用できる環境が整ってきました。国内では昔と比べると若い人材が不足し、市場も縮小していますが、海外に目を向ければその状況は全く異なります。いかに海外人材を受け入れ、活躍してもらうかが、これからの日本企業の成長を左右する大きなテーマになると思っています」。豊明の本社オフィスで取材に応じた岡本高光社長は、モニター越しの豊明ベトナムの様子を見ながらそう話した。
グループウェアで全社員が予定を共有
社員の予定はグループウェアで全員が共有できるようにしている。現場の状況、積算、図面の仕上がり、打ち合わせ、商談などの予定を各自が一目で把握できる。Web会議システムも積極的に活用し、社員たちは必要に応じて個人間の打ち合わせや会議をオンラインで行っている。
10年前、成長著しいベトナムに大きな可能性を感じた
10年前、岡本社長は、新たな商材としてヨーロッパ発祥の装飾性が高い金属建材、ロートアイアンに着目し、その調達先として、ロートアイアンの製造がさかんなベトナムに白羽の矢を立てた。この判断が、ベトナムと絆を結ぶきっかけになった。ベトナムはフランスと文化的なつながりがあることからデザイン性に優れたロートアイアンを製造できる業者が多く、ヨーロッパ製と比較して調達価格が安いという魅力もあった。
視察や商談で何度もベトナムを訪れるうちに、若い労働力が多く、経済が急成長しているベトナムに大きな可能性を感じるようになったという。「当時からベトナムではデジタル技術の導入が活発で、スマートフォンの普及も日本より先行していました。他のアジアの国々と比べて親日度も高く、真面目で人材としてのレベルが高いという印象を持ちました。また、時差も2時間と短く、仕事を進めていく上での連携が取りやすい。海外での拠点を設ける上で数多くの優れた条件がそろっていました」と岡本社長は振り返る。
ベトナム人社員は関西弁も堪能
着実に準備を進めて、4年前にベトナムに子会社を開設。ベトナム人の採用も積極的に進めた。「ベトナム人社員は日本人社員と同等以上の戦力として活躍してくれています。社内のインフォーマルな場面では、会話が関西弁中心なので、ベトナム人社員はみんな標準語だけでなく関西弁にも対応できます。方言に親しむことは地域に溶け込んで生活していく上でも大事なことなので、今後、入社する社員にもぜひ習得してほしいと思っています」と岡本社長。
ベトナム人社員も会社になじんでいる。「社内の雰囲気はとてもアットホーム。みんな親切でとても働きやすい環境です。温かく受け入れていただいているので、外国の企業で働いているという意識は全くありません」。日本の大学を卒業して豊明に入社した経理や貿易業務などを担当しているヴ・ティ・キム・トアさんは、流暢な日本語でにこやかに話した。
ICTを活用して週2回の研修に臨む
「生活文化や言語が異なる海外人材を受け入れて戦力として育ってもらうことは簡単ではありません。だからこそ、長期的な視野でしっかりとした育成システムを整えなければならないと考えています」と岡本社長。人材育成を図る上で役立っているのがICTだ。
豊明では、2年前からベトナム人社員に週2回、Web会議システムを活用して、人材コンサルティング会社による研修を受けてもらっている。研修内容は建築関係の専門用語、日本文化とベトナム文化の違い、商慣習の違い、関西の文化など幅広い。研修時間の中で、ベトナム人社員は、日本語での3分間スピーチにも取り組む。話し終えた後、講師に表現のチェックを受け、改善点を次のスピーチに生かすことで自然な形で日本語を習得することを目指している。
天然石素材の装飾材をインドから輸入販売
豊明はベトナムの高度人材を積極的に活用することで海外事業や新事業分野への進出を加速している。
輸入事業の中で、ロートアイアンとともに主力商材となっているのが、インドから輸入している天然石を薄く剥がして、3ミリのシート状に加工した装飾材「Houmei Three Stone(ホウメイスリーストーン)」だ。透過性を高めた新タイプも投入し、コンクリート、セラミック、木材、タイル、合板タイルなど様々な下地材に貼り付けることが可能な装飾用建材として、デザイン性を重視した建造物を対象に販売を伸ばしている。
宅配ボックスの開発でメーカーとしての機能を強化
また、メーカーとしての機能を強化しようと、コロナ禍で変化した生活様式に対応するための新商品としてデザイン性を重視した宅配ボックス「スタイルT-BOX」の販売を開始した。サイズは幅50センチ、高さ160センチ、奥行き40センチ。外観は扉の中央枠をなくすことでスタイリッシュにしている。ボックス内にはフリースペースがあり、防災備品を収納するなど様々な使い方が可能。電子ロックを採用し、ワンタイムパスワード機能で宅配業者にいつでも荷物を入れてもらえるようにしている。大手不動産会社が販売するマンションでの採用が決まるなど全国で販売先を拡大している。
仮想空間、メタバースにも強い関心
岡本社長は、今後も海外人材の採用、育成を進めていくにあたり、インターネットを通じて利用する仮想空間、メタバースにも強い関心を持っている。メタバースを活用することで、これまで以上に距離と時間の壁を超え、コミュニケーションを取ることが可能になると考え、情報収集に力を入れている。
「優れた人材をそろえることで会社は成長していきます。中小企業にとってデジタル化とグローバル化に伴う変化は大きなチャンスです。これからも積極的に海外の高度人材を採用、育成して相互交流を進め、新しい時代に対応した企業文化を醸成していきたい。豊明で育った海外人材が日本に定住して、海外との交流の懸け橋になってくれるのならこれに勝る喜びはありません」と岡本社長は熱い口調で語った。
ICTを活用してグローバル化を進めることで、中小企業の可能性は飛躍的に高まる。豊明の取材を通じて、先の見通しが不透明な時代だからこそ、中小企業が、グローバルな視点で事業戦略の策定と人材の育成を図る必要があると強く感じた。
事業概要
会社名
株式会社豊明 http://houmei-hsc.com
本社
奈良県北葛城郡王寺町畠田8丁目1757-3
電話
0745-32-7198
大阪営業所
大阪市西区立売堀1丁目9-15アセントビル6F
電話
06-6626-9447
大正研修
センター
大阪市大正区泉尾2丁目15-14
設立
1989年3月
従業員数
33人
事業内容
ビル用金属製建具の販売・設計・施工・リフォーム・メンテナンス、ベトナム直輸入のロートアイアン製品の販売・設計・施工、内外装用超軽量極薄天然石材の販売・施工、宅配ボックスの設計、製造、販売