事例集

2022.06.01 06:00

OCRで紙文書を瞬時にデジタルデータ化 半日仕事だった発注書の入力作業が30分に 昭栄建設(三重県)

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紙文書をスキャナーで読み込み、書かれている文字を認識してデジタルデータにする技術、OCR(光学的文字認識)を導入した三重県桑名市の昭栄建設。紙文書の文字をパソコンに入力する手間のかかる作業から解放されICT活用を次の段階に進めようとしている。

地域の人々の生命を支える上下水道工事、維持を行う建設会社


現在は生活道路になっている江戸時代の旧東海道沿いの所々で昔の面影を残す三重県桑名市。昭栄建設は1965年の創業以来、同市内の道路、上下水道などのインフラの建設、メンテナンスに尽力してきた。「手掛けた道路や上下水道は、ずっと桑名に残っていくものです。地域の皆様に利用いただいているということを社員全員で意識して、お役に立ちたいという思いで事業に取り組んできました。60年近い歴史を通じて培ってきた技術と経験を生かして初心を忘れることなく、これからも桑名のまちづくりに貢献していきたいと考えています」。取材に訪れた4月中旬、昭栄建設の本社で、伊藤緑取締役はそのように地元への思いを語った。

桑名市内に残る東海道の面影

桑名市内に残る東海道の面影

さまざまな書類をExcelで作成 半日仕事になることも


建設会社にとって、工事の着手前から施工中、完成時、完成後のそれぞれの段階で発注者に提出する関係書類の作成は重要な業務だ。総務の仕事を統括する伊藤取締役は、発注者の様式に基づいて、月当たり十数件の工事に関係するさまざまな書類をExcelで作成している。

発注者が様式のテンプレート(雛形)をデータでダウンロードできるようにシステムを整えている場合は、ダウンロードしたテンプレートに上書きするだけで効率よく書類を作成できるが、そうでない場合は、様式のテンプレートそのものから書類を作らなければならない。

「様式は発注者によって異なります。データをダウンロードできない場合は、発注者にFAXで様式のテンプレートを送ってもらうなど紙ベースで対応しなければなりません。テンプレートの作成は、段落やラインの位置を調整しながらの細かい作業になるので、正直悩みの種でした」と伊藤取締役は話した。作成する書類の内容にもよるが、作業をしている最中に電話が入ったり、来客があったりして頻繁に中断するので、半日仕事になることが多かったという。

OCRの機能を備えたスキャンシステムを導入し効率化を達成


この課題を解決してくれたのが、業務のデジタル化を促進するために昨年10月に導入したOCRの機能を備えたスキャンシステムだった。

取材に答える昭栄建設の伊藤緑取締役

取材に答える昭栄建設の伊藤緑取締役


「OCRを活用することで以前は半日がかりだった作業を30分程度で終わらせることができるようになりました。紙文書を複合機でスキャンするだけで、Excelのデータに変わった状態でパソコンに届くので、以前のようにテンプレートそのものを作成する必要がなくなり、ピンポイントで一部を上書きするだけで作業が済むようになりました。Excelだけでなく、Word、PowerPointなどのデータに変換することもできるので本当に便利です」。導入したOCRについて伊藤取締役はこのように話した。

スキャンなら手入力の転記ミスが防止できる


紙文書を見本に文字をパソコンに入力する作業は非常に効率が悪く時間がかかる。ほかの仕事もこなして時間に追われながら入力しているとミスをする危険性も高くなる。その点、OCRであれば、スキャンをすると同時に紙文書の内容がデータ化されるので、入力し直す手間を削減できる。紙文書を始めとするアナログ情報を扱う業務が数多く残っている業界では、大きな業務改善効果を見込むことができる。

「話には聞いていましたが、OCRを実際に使ってみることで、面倒な文字入力の仕事を一瞬で代行してくれる機能ということを実感できました。スキャンするときに複合機のモニターパネルで、パソコンの画面を見ている感覚で送信先のフォルダを指定することができるのも非常に助かります。ひとつの仕事が早く片付くと集中してほかの仕事に取り組めるので作業効率がアップしています。もっと早く導入していればよかったと後悔しています」(伊藤取締役)。

昭栄建設のオフィスの様子

昭栄建設のオフィスの様子

OCRでデータ化すれば書類探しの手間もなくなる


今のところ、過去の経理関係の書類や工事の記録、図面などは紙文書で保管しているが、これからの社会全体のペーパーレス化の流れにはしっかりとついていきたいと考えている。「スキャン機能を使って紙文書をデジタルで保管することも今後検討していかなければならないと考えています。文書のデジタル化が進めば、現在、保管場所に使っている会社のスペースを活用することも可能になりますし、さまざまな効果が期待できそうです」と伊藤取締役。

紙文書をデータに変換することで、キーワードによるデータの検索がしやすくなることもOCRを活用する利点のひとつだ。紙の書類の中から探すケースと比較すると、必要な資料を見つけるまでのスピードは格段にアップする。「検索機能の活用など更なるOCRの使い方をこれから探っていきます」と伊藤取締役は積極的な姿勢を見せる。システムにはPDFの編集を可能にする機能も備わっている。コメントの記載のほか、丸印や角印で日付スタンプを作成することもできる。

ICT活用で企業変革を進める


社員数は現在、12人で平均年齢は40歳。受注が好調なことから、昭栄建設は、若い人材の採用活動を強化している。会社の特色を広く知ってもらおうと中小企業向けホームページの作成システムを導入し、昨年11月からホームページを立ち上げた。会社の施工実績を写真付きで紹介するとともに社員採用のコーナーを設け、募集要項や応募フォームを掲載している。パソコン向けのホームページを作成するとスマートフォン向けホームページも自動的に生成されるので非常に使いやすいという。

ホームページを編集する様子

ホームページを編集する様子


ほかにも、昭栄建設では現場で施工管理システムを活用するなど積極的にICTを導入している。伊藤取締役はICTの導入による業務の効率化によって確保した時間を、情報発信の取り組みなど会社の存在感を高めるプラスアルファの業務にあてていきたいという。

昭栄建設の本社外観

昭栄建設の本社外観


「多くの人に会社のことを知ってもらえるようにホームページのコンテンツの充実にも取り組んでいきたいと考えています。地域のインフラを支える、やりがいのある仕事であることをアピールしていきたい。若い人に将来性を感じてもらえることはもちろん、居心地がいい働きやすい会社にしていきたいと思っています」と意欲を示す伊藤取締役。ICTの活用方法を深掘りすることで、昭栄建設はその可能性をさらに広げていくに違いない。

事業概要

会社名

株式会社昭栄建設

本社

三重県桑名市大字大福155番地

電話

0594-22-2270

設立

1965年4月

従業員数

12人

事業内容

土木工事、管工事、水道施設工事、とび・土工工事、舗装工事



中小企業診断士監修の建築業の課題診断
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