事例集

2022.03.22 06:00

3施設をLAN接続で統一 ICTによる効率化で幼老複合の社会福祉モデルを推進する 阿南福祉会(徳島県)

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徳島県阿南市の社会福祉法人・阿南福祉会が複数施設一体型システムの運用を進めている。セキュリティを考えて共有化する情報としない情報を仕分けし、個別に運用していたシステムをまとめることにより、業務の効率化やサービスの向上につなげようとしているのである。

お年寄りと子どもたち 世代を超えた交流を促進

阿南福祉会のホームページ

阿南福祉会は、高齢者の生きがいづくりと幼い子どもたちへの教育効果を考え、隣接して特別養護老人ホーム(阿南荘、琴江荘)と保育園(阿南保育園)を運営している。隣り合ったこれらの施設を通じて、お年寄りと子どもたちが自然な形で交流を育めるよう構造を工夫しているという。

阿南福祉会は1972年、当時、徳島県南部で不足していた特別養護老人ホームを運営するために設立され、地域の高齢者福祉を支えてきた。県内で3番目の特別養護老人ホームの阿南荘に加え、1977年には阿南保育園、1981年にはもうひとつの特別養護老人ホーム、琴江荘を設立。その後、訪問介護、デイサービス、居宅介護支援など高齢者福祉分野で提供するサービスを拡充してきた。児童福祉の分野では地域子育て支援事業、児童一時預かり事業も行っている。

阿南荘は2009年に改築し、徳島県内で最大の142床(特養120床、短期入所22床)を備えている。別の場所にあった琴江荘と阿南保育園は2015年、現在の場所に新築移転した。

テラスからは子どもたちが遊ぶ姿を眺めることができる(阿南福祉会ホームページより)

テラスからは子どもたちが遊ぶ姿を眺めることができる(阿南福祉会ホームページより)

「人と人、人と地域をつなげることを大事にしています。子どもたちの元気な声が聞こえる環境はお年寄りを元気付けますし、幼い子どもたちもお年寄りとのふれあいを通して、いたわりの心やマナーを育むことができます。世代間の交流を促進して地域共生社会を実現することも社会福祉法人としての大事な使命と思っています」。阿南荘の助石浩章施設長は柔和な表情でそう語った。

業務効率化にICTを段階的に導入

書道、生け花、カラオケといったクラブ活動を通じて利用者さま同士のコミュニケーションを促進している(阿南福祉会ホームページより)

書道、生け花、カラオケといったクラブ活動を通じて利用者さま同士のコミュニケーションを促進している(阿南福祉会ホームページより)

ICTの導入やダイバーシティ(多様性)の推進に積極的なことも阿南福祉会の特色のひとつ。特別養護老人ホームでは介護記録システムを20年近く前から導入し、システムと連動したタブレット端末の導入も段階的に進めている。保育園では、園児たちの個人記録や指導計画作成といった事務業務を効率化するシステムを数年前から導入済みだ。

「どうすれば業務を効率化して、利用しているみなさんへのサービスに還元できるのかを考えて、必要に応じてその都度必要なソリューションを導入しています」。ICTの導入にあたって心掛けていることを助石施設長はこのように説明した。

ホームページで各施設の特色を発信

阿南福祉会のホームページ

阿南福祉会のホームページ


企業向けホームページ作成ソフトを導入し、それぞれの施設がホームページの編集を担当している。阿南荘は施設内の紹介を中心にした内容で、琴江荘は年間行事、レクリエーション、食事などを紹介している。阿南保育園は施設内の紹介に加え、運動会やクリスマス会の内容を豊富な写真と共に掲載している。「ホームページの内容を通じてそれぞれの施設の特色を知っていただけるようにしています。利用していただいているお年寄りや子供たちの家族の皆様に安心していただく上でも情報の積極的な発信は大切と思っています」(助石施設長)。

遊戯室には太陽の光が降り注ぎ、子どもたちの成長を見守ってくれる(阿南福祉会ホームページより)

遊戯室には太陽の光が降り注ぎ、子どもたちの成長を見守ってくれる(阿南福祉会ホームページより)


阿南荘、琴江荘では食事の準備などの家事をサポートする介護助手として高齢者、障がい者、外国人を採用している。「生産年齢人口の減少に伴って、人材の確保は介護だけでなくさまざまな業界の大きな課題になっています。多様なバックグラウンドをもった人たちが働きやすい職場を作っていくことは、人手不足への対応のみならず、多様性を尊重する社会を作っていく上で大切なテーマと思っています」と助石施設長は働き手のダイバーシティを推進する背景を説明した。

入居者のプライバシーに考慮したユニットケアが特色の琴江荘(阿南福祉会ホームページより)

入居者のプライバシーに考慮したユニットケアが特色の琴江荘(阿南福祉会ホームページより)

セキュリティが課題だった3つの施設のシステム一元化


2015年に3つの施設が隣接するようになってからシステムを統合して情報を一元管理することが課題になっていた。「3つの施設が個別のシステムを利用していたため、情報の伝達や共有に手間がかかることがありました。クラウドやVPN(仮想専用線)の活用も検討したのですが、外部と接続することで情報漏洩のリスクが高くなることもあり、なかなか踏み出せませんでした」と助石施設長は振り返った。

セキュリティを維持した上で情報を共有化するにはどうすればいいか、古くから取引のあるシステム会社に相談を持ち掛けた上で検討した結果、3つの施設をLANで接続した上で、ファイルサーバーを導入し、就業規則、会計、厚生労働省や自治体からの通知といった法人全体に関係する文書だけを共有することにした。「この方式なら利用者のデータなどそれぞれの施設で管理している情報はネットワークにつながずに済み、セキュリティを確保することができるので不安が解消しました」と助石施設長は話した。

ファイル共有で3つの施設の収支状況をリアルタイムで把握


「距離が近いところに3つの施設が集まっていることから接続工事は簡単に済ませることができました。以前は法人の財務会計を年に3回作成する際に、3つの施設がそれぞれ作成した会計報告を私が合算していたのですが、作業はどうしても締め切り前に集中してしまいます。おかげで、かなりの時間を取られるだけでなく神経も使っていました。今は、ファイル共有のおかげで、3つの施設の収支状況をいつでも把握できるようになったので余裕を持って準備ができるようになりました」と助石施設長。

外部への案内や報告のための文書を作成する際の施設間の調整も楽になった。「以前は必要な文書をメールで送って、内線電話で話しながら修正や加筆などの調整を行っていました。メールを何度もやり取りしなければならなかったのですが、今はフォルダで文書を共有できるようになったので、修正や確認は格段にはかどるようになりました」と助石施設長はうれしそうに話した。

データ社会への対応を図る


法人全体の従業員は約260人にのぼる。システムを統一したことで、以前は阿南荘だけで利用していた従業員の経歴や役職、等級などを管理する人事システムを法人全体で利用できるようになった。また、勤務情報の一元化によって、入所者サービス充実のための最適配置の検討も可能になった。

阿南福祉会は、阿南市内の総合病院と隣接した企業主導型保育所の運営も行っており、今後、新たに事業に取り組む際にも、得られた情報は、施設運営と施設づくりに効果を発揮するはずだ。今後、財務や給与のシステムの統一も段階的に進めていくことで、より一層のコスト削減ときめ細かな運営ノウハウを身に着けられる。

「ICTの活用はサービスの充実などを通じて社会還元することで意味が出てくると思っています。業務の内容をデータとして残す取り組みも進めていきたい。データの活用がこれまで以上に重要になるデジタル社会に対応していけるようにこれからもしっかりとICTに関する情報を収集していきます」と語る助石施設長。人と人のふれあいを大事にバランスよくICTを活用することで、阿南福祉会はこれからも地域を支えていく。

事業概要

法人名

社会福祉法人 阿南福祉会

本社

徳島県阿南市宝田町今市金剛寺43番地

電話

0884-22-5656

設立

1971年12月

従業員数

260人

事業内容

特別養護老人ホーム事業、保育園事業

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