事例集

2022.01.14 06:00

Web会議、クラウドでコロナ禍のピンチをチャンスに変えたサイカワ(新潟県)

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産経ニュース エディトリアルチーム

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企業にとって、コロナ禍による対面活動の縮小はビジネスの大きな足かせになった。このピンチを積極的にICTの導入を図ることでチャンスに変えた企業がある。新潟県柏崎市で110年超の歴史を持つ機械メーカーのサイカワ。西川(さいかわ)正男社長はICTを中小企業が世界で戦っていく上での効果的な「武器」と認識し、その視線を先に向けている。

110年超の歴史を誇る伸線機メーカー


サイカワの本社・工場は、新潟県柏崎市を代表する産業ゾーン、田尻工業団地内にある。「企業としてお客様の要望をしっかりと具現化する対応力を大事にしていきたいと思っています。そのためには規模を大きくするよりも小回りが利く機動力を重視していきたい。スムースな意思疎通を持続する上で現在の体制が適正規模に近いと思っています」。取材に訪れた12月中旬、工場内に並ぶ組み立て中の伸線機を見ながら西川社長は話した。

「お客様の要望をしっかりと具現化する対応力を大事にしていきたい」と話す西川正男社長

「お客様の要望をしっかりと具現化する対応力を大事にしていきたい」と話す西川正男社長

コロナ禍で対面営業が減少。大きなピンチに


『世界を駆ける、小さな会社』を信条にしている。「しっかりとビジネスを継続できるのは、全国だけでなく世界各地のお客様からの受注生産に特化しているからです。新潟県柏崎市にも世界を相手にビジネスを行っている小さな会社があるという誇りを社員に持ってもらいたいとの思いを込めています」(西川社長)

サイカワは1910年、石油採掘用の機械と部品を製造する企業として創業した。1934年に「電気の時代」の到来を見越した当時の理化学研究所の大河内正敏博士のアドバイスを得て、銅線などの貴金属線を細く伸ばす伸線機の製造を手掛け始めた。最初の伸線機を製造してから約85年の歴史の中で技術を磨き、現在は伸線機以外にも撚線機・焼鈍機・LANケーブル製造装置・FFC製造装置・光ファイバーケーブル製造装置などさまざまな線材加工機の設計から製造、販売までを請け負っている。

発想を転換 Web会議の活用や現場点検で対応スピードアップ

伸線機の製造に取り組むサイカワの社員

伸線機の製造に取り組むサイカワの社員


営業部がお客様からヒアリングしてきた内容を設計担当の技術部にフィードバックし、出来上がった図面を製造部が製品として正確に仕上げるチームワークが強みだ。その中で、コロナ禍が拡大し始めた2020年春ごろから、受注の窓口となる対面の営業活動が制約された影響は大きく、「新型コロナウイルスにこのまま潰されてしまうのではないか」と社内からは悲観的な声もあがったという。

「コロナ禍で厳しいのはどこも同じです。直接会えないのであれば何か別の方法を見つければいい、と社員に呼びかけました。最初はどこまでできるかわかりませんでしたが、Web会議システムを活用すれば道は開けると思い至りました」と西川社長は振り返った。

これまで取引実績がある企業は国内230社、海外130社にのぼる。対面ですることが当たり前と思い込んでいた商談や打ち合わせをオンライン中心に変えたことで、当初想定していなかった効果が生まれた。

「世界、全国にお客様がいることで出張費がかさむことは避けられませんでした。コロナ禍の前は、営業、技術、検査、アフターサービスの担当者を合わせて数人、多い時には10人ほどが、本社とお客様の間をしょっちゅう行き来していました。いくらかかっても出張費は必要な経費と割り切っていたのですが、オンラインでもしっかりとしたコミュニケーションができることがわかってきたので出張の件数を大幅に減らすことが可能になりました。お客様も考えは同じで、以前は足を運んでいただいていた我が社の工場で試運転を行う際も、ご要望に合わせてオンラインでやりとりすることも可能になりました」と手応えを感じている様子で西川社長は話した。

納品先の機械が故障した際の対応も、まずは状況を把握するため現地に急行するケースが多かったが、現在は、パソコンと装置をネットワークで結ぶことで遠隔操作が可能となり、機械の状態を出張することなく確認及び修正する事もできるようになりました。そういったケースで現地に出張する件数が減るだけでも社員の負担やコストの削減につながります」(西川社長)。削減効果と同時に対応スピードのアップでお客様の信頼感も向上した。

クラウドシステムを導入し、膨大な資料を持ち歩く必要がなくなった

図面をチェックするサイカワの社員

図面をチェックするサイカワの社員


今年1年でICTの導入を一気に加速させた。今年5月には外部からICTに詳しい人材を採用し、システム運営を担当する情報管理課を新設した。さらにクラウドシステムを導入することで、営業と設計の情報を共有化し、スマートフォンやタブレットで外出先からでも図面などの情報を閲覧できるようにした。
以前から各部署で重複している業務を仕分けして無駄を省いていこうという雰囲気が醸成されていたこともあって、システムの導入はスムースに進んだ。

「以前は膨大な資料を持参してお客様を訪問していたのですが、クラウドで情報を保管するようになったのでタブレット端末やパソコンを持っていくだけで済むようになりました。資料を外部に持ち出して紛失するリスクもなくなるのでセキュリティ面でも安心です。ものづくり企業なので在宅勤務の導入は難しいと思っていましたが、今後、不測の事態が起こった時も十分に対応できそうです」と西川社長。

新型コロナウイルス対策を強化したサイカワのオフィス

新型コロナウイルス対策を強化したサイカワのオフィス

給与明細の配布もデジタル化


給与明細の電子化ソフトも稼働を始めた。「120人の社員の給与明細を1枚1枚折って封筒に入れてそれぞれの社員に渡す手間がはぶけます。作業は単純ですし、大きな負担ではありませんでしたが、給与に関する神経を使う仕事なので担当者には心理的なプレッシャーがかかっていました。その負担を取り除くことで、ほかの仕事に集中してもらえます。間接部門の仕事が増えてきたので、ICTを活用することで重複する事務を一気に削減していきたい」(西川社長)

中小企業こそICTフル活用を!さらなるICT導入を計画

伸線機が作り出す貴金属線のサンプル

伸線機が作り出す貴金属線のサンプル


5Gの時代、デジタル機器に欠かせないさまざまな貴金属線を作る伸線機の需要はこれからも拡大が見込まれる。西川社長は、スマートグラスやAIやIoTを活用した故障予知システム、デジタルホワイトボード、RPA(Robotic Process Automation)などさまざまな技術の導入にも目を向けている。「工夫して使うことで更なる業務の効率化や社員の負担軽減の実現や、お客様が求めるさらに上の水準を目指すこともできそうです。ICTは製造業だけでなく、あらゆる業種でチャンスの拡大をもたらしてくれます。中小企業こそICTをフル活用する道を進むべきです」。

機械の性能だけでなく、使いやすさも高めていきたいという。「設計担当者が作成している製造した過去の機械のデータベースを社員全員で共有できるようにしたいと思っています。共有化できる情報が増えるとその分、納期も短縮できます。これまでのノウハウを活用することで、新型コロナウイルスの感染が落ち着いた後、停滞していた海外の販路拡大も一気に加速できそうです」と西川社長は先を見据える。

サイカワの本社の外観

サイカワの本社の外観


業務の効率化で浮いたコスト分をICT導入に投資すれば、さらなる生産性の向上につながる好循環が生まれる。日本の中小企業のデジタル化を進める上でピンチをチャンスに変えたサイカワの取り組みはモデルケースのひとつになるはずだ。

事業概要

会社名

株式会社サイカワ

本社

新潟県柏崎市大字安田7586番地

電話

0257-24-4111

設立

1910年8月

従業員数

121人

事業内容

各種材料線の伸線機、電線装置機械、光ファイバーケーブル製造装置LAN電子ワイヤーケーブル製造装置、塑性加工機械などの設計、製造、販売

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