事例集

2022.01.06 06:00

協同組合から株式会社へ組織変更 ICTを武器に海外販路拡大を図る延岡生花地方卸売市場(宮崎県)

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産経ニュース エディトリアルチーム

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デジタル技術を活用してグローバル市場に打って出る。宮崎県延岡市で協同組合から株式会社化して間もない卸売市場の大きな挑戦が始まろうとしている。延岡生花地方卸売市場の取り組みは、地方の中小企業がDXによって新しい市場を開拓するモデルケースになる可能性を秘めている。

協同組合から株式会社へ。その狙いは

卸売市場で、これからのビジネスを熱く語る岡田明利社長

卸売市場で、これからのビジネスを熱く語る岡田明利社長


2021年5月15日に開催された約110人の組合員が参加する協同組合延岡生花地方卸売市場の通常総会で、9月1日付けで株式会社に組織移行する議案が賛成多数で可決された。協同組合として58年の歴史を持つ卸売市場が企業化への一歩を踏み出した瞬間だった。

「協同組合は、組合員全員がそれぞれ一票の議決権を持っているので合意形成に時間がかかります。国内市場が縮小する中、取引の仲介だけでは卸売市場が採算性を維持するのは難しく、外に目を向けて新しい事業を創造していかなければなりません。そのためには意思決定を迅速にできる組織にする必要がありました」。取材に訪れた11月中旬、岡田明利社長は株式会社化の狙いをこのように語った。

事業を通じて社員を豊かに、社会に貢献してきたいとの気持ちを強く持っている。卸売市場は関係者以外立ち入ることが難しいというイメージを和らげようと競りを体験できるイベントを開催するなどさまざまな企画を始めている。株式会社化を機に人が集いやすい開かれた卸売市場にしていきたいという。

ICT環境を自前で構築 ネットショップの運営も

延岡生花地方卸売市場が運営しているネットショップ「エンフラワー」

延岡生花地方卸売市場が運営しているネットショップ「エンフラワー」


岡田社長は、協同組合時代の2013年から卸売市場の代表理事を務めてきた。代表理事に就任後は、経営していた花店を部下に任せ、卸売市場運営の職務に専念している。「株式会社化した後、頑張れば頑張るほど組織が変わっていくことが実感できるようになったので、社員の意識が内向きから外向きに大きく変わりました」と株式会社化の効果を実感している。

卸売市場の運営や営業などの業務に携わる社員は5人。社内の業務はデジタルファーストで取り組んでいる。メモリーの増設やWi-Fiなどの通信ネットワークの構築などオフィスのICT環境は自分たちで整えている。グループウェアで商談や顧客の情報、画像や動画をリアルタイムで共有するようにしている。
「スピード感を持って、5人でも卸売市場の運営とプラスアルファの仕事がこなせるのはICTのおかげです。近年、情報の検索、共有化、伝達が、従来とは比較にならないほど便利になりました。5Gが普及すると情報伝達の速度と密度はますます高まっていくのではないかと楽しみにしています」と岡田社長。その一方で、電話やFAXによるコミュニケーションも大事にしているという。「世の中のすべてが一気にデジタル化するわけではありません。取引先やお客様にはさまざまなコミュニケーションの選択肢を提供することが大事と思っています」

2年前から、卸売市場は会員店舗と共同で、延岡の花で作った花束やアレンジメントフラワー、ドライフラワーを販売するネットショップ「エンフラワー」を運営している。今後は、生産農家から仕入れた手を加えない花そのものの販売も強化していく。安定した価格で仕入れることで農家に安定した収益をもたらすことを目指したいという。

業務効率化のため新型複合機を導入

自動紙折り機能が備わった複合機

自動紙折り機能が備わった複合機


設備投資も積極的に行っている。2年前にはリコージャパンから省スペースで自動紙折りを実現する新型のデジタルフルカラー複合機を導入した。
以前は、生産者や花屋あての支払明細書など封書で郵送しなければならない文書は、1枚1枚手折りしなければならなかったが、新型複合機は自動で印刷と同時に紙折りしてくれるのでその手間が省け、月あたり約400枚分の作業時間(約200分)の短縮につながっている。

「作業にあてる時間の見通しが立ちやすくなったので、効率的に仕事の時間配分ができるようになりました。単純な作業は機械に任せておけば大丈夫という安心感があるので企画などのほかの仕事により意識を集中できるようになりました。社員がいきいきと働くことができる環境を作る上でICTは大きな役割を果たしてくれています」とにこやかに岡田社長は話した。

地の利を生かして延岡に九州の花を集める


地域の枠を超えた幅広い事業活動が可能になったことが、株式会社化の最大の効果といえる。延岡市は熊本市、大分市、宮崎市の各都市に均等にアクセスできる九州東部の交通の要衝だ。物流の拠点としての優位性を生かそうと岡田社長は各地の卸売市場に足を運び、提携を持ち掛けている。

スイートピー、ラナンキュラスといった宮崎県内でそろえることができる花以外に九州各地の花を延岡でまとめて海外に輸出する仕組みを作ることができないかと考えている。「地域の限られた市場で販売するよりも海外に市場を広げた方が高い値段で買い取ってもらえる可能性は高くなります。生産農家の収入を安定させることができますし、海外から花を輸入して日本で販売することも検討したい。花の流通だけでなく、人や文化の交流にもつなげたいと思っています」(岡田社長)。

シンガポールで行ったスイートピー他の花卉のプロモーション

シンガポールで行ったスイートピー他の花卉のプロモーション

覚悟と自信を持って海外に積極営業


岡田社長は協同組合の代表理事に就任して以降、宮崎県が促進するスイートピーなどの花卉を香港に輸出するプロジェクトに携わった経験を持つ。そのときに蓄積した貿易や海外プロモーションについての知識と経験、人脈を海外販路の開拓にフル活用している。

香港に加え、北京、上海、大連、韓国・ソウル、台湾などアジア各地の事業者から花のニーズについての情報の収集や商談を進めている。「これまで宮崎の農業は営業活動を外部に頼り過ぎていたように思います。産地がバイヤーを決めていくくらいの覚悟と自信を持って取り組むことで、新しい道が開けるはずです」と力強く岡田社長は話した。

ICTで延岡をグローバルビジネスの拠点に

オフィスで仕事に取り組む延岡生花地方卸売市場の社員の様子

オフィスで仕事に取り組む延岡生花地方卸売市場の社員の様子


Web会議によって国境を越えた商談がいつでもできるようになった。小さな企業でもデジタル技術を使いこなせば世界を視野に入れたビジネスをすることが可能だ。「人口やビジネス環境の面で地方は大都市に比べて不利ですが、デジタル化が進むと物理的な制約から解放されるので、いい勝負ができるようになるでしょう。この点を意識しているかでこれからは大きな差がついてくると思います。社会の中でICTやデジタル技術を導入する余地はまだたくさんあると思っています」と岡田社長は先を見据える。

地元の延岡市が、内閣府が指定するスーパーシティ型国家戦略特別区域に立候補するなどさまざまなデジタル化への取り組みを進めていることもこれからの事業活動に相乗効果を発揮しそうだ。延岡生花地方卸売市場の挑戦は新しい地方創生の形を生み出すかもしれない。

事業概要

会社名

株式会社 延岡生花地方卸売市場

本社

宮崎県延岡市東浜砂町1315番地1

電話

0982-33-1411

設立

1963年8月

従業員数

5人

事業内容

生花卸売市場の運営、ネットショップの運営

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