事例集

2021.12.10 06:00

クラウドシステムとスマートフォンの活用で、働き方を変え、顧客との信頼をより強固に 弘文堂(東京都)

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産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


「営業と内勤の連携を強めたことで、お客様への対応が大きく変わりました。会社が利益を上げるのは、営業だけの力ではありません。内勤スタッフのサポートにも支えられています。営業の動きを内勤スタッフが共有し、支え合いながら会社は成長します。今、その効果を実感しています」

東京都町田市で企業や官公庁向けにオフィス機器やビジネス用品を販売する弘文堂の植木将弘社長はこう語り、顧客サービスが大幅に上がったことに胸を張った。2019年にクラウド型の情報共有システムkintone(キントーン)を導入し、営業情報を「見える化」した。さらに営業と内勤の連携に役立つ新たな電話システムを追加。すると、「外」と「内」との連携がスムーズになり、業務が集中していた営業の負担が軽減され、業績にも好影響を与えるようになったという。まずは、kintoneの導入から―。

営業に仕事が集中…「負担を軽減できないか」


「取引先は店から車で20分くらいのエリアが中心です。文具用品からスタートし、複合機などのOA機器やオフィス家具など大型機器を扱うようになりました。ここ数年はICT化の流れを受けて、ソリューション関連のニーズも増えています」

ICTを駆使して営業の業務改善に取り組んだ弘文堂の植木将弘社長

ICTを駆使して営業の業務改善に取り組んだ弘文堂の植木将弘社長


1960年代から町田に店を構え、時代の変化とともに変化する取引先のニーズに機敏に対応。市の発展とともに事業を伸ばしていった。困りごとがあればすぐに駆け付け、親身になって対処する。地元に根差したサービスを提供し、信頼を集めている。店舗で印鑑や文具用品などを販売する一方、外回りの営業活動が売り上げの大半を生み出している。

植木社長が経営の舵をとるようになったのは2010年のことだ。父である先代社長が突然倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまった。当時まだ30代半ば。会社に籍を置いていたが、営業担当で経営にはノータッチ。右も左も分からないまま会社を切り盛りすることになってしまった。

「一番困ったのは給与計算でしたね。どうやって計算したらいいかも分からなくて…。ところが便利なもので、計算してくれるソフトがありました。なんとか遅れずに支給できました」と当時の苦労を振り返った。

経営に携わると、会社の課題も見えてきた。

「とにかく営業が多くの負担を抱えていました。営業が帰社すると、発注作業などの仕事が山積み。細々した仕事に疲れて、大きな案件を後回しにしてしまう。そんな悪循環が生まれていたんです」

この課題を解消しようと、導入したのがkintoneだった。

内勤スタッフもクラウドで営業情報を「見える化」


弘文堂の社員は社長を含め9人。このうち3人が営業を担当し、内勤に2人の営業アシスタントを置いている。「お客様と直接話をするのは営業。内勤のアシスタント業務は主に電話対応くらいでした。お客様の詳しい情報は頭の中にあり、アシスタントは把握していません」。日報や進行中の案件などを管理はしていたが、日報は紙ベースで作成され、案件管理などはパソコンの表計算ソフトに入力されていた。内勤スタッフがみられる環境にはなかった。

導入したkintoneのアプリに、「顧客情報」「顧客との取引記録」「顧客からの日々の問い合わせ記録」「営業日報・月報」「納入機器」「スケジュール」「進行中の取引案件」などの営業データをすべて搭載。これらのアプリは、植木社長自らが使いやすいようkintoneで作成。サンプルアプリがあるので、プログラムのノウハウは必要ない。自分たちが使いやすくなるように、自らでカスタマイズすることができる。最も大きな利点は、クラウドなので誰もがみることができるところ。内勤スタッフも閲覧でき、更新できる環境を整えた。

植木社長自ら、業務に合わせて社員が使いやすくなるように、アプリの改善に取り組んでいる

植木社長自ら、業務に合わせて社員が使いやすくなるように、アプリの改善に取り組んでいる


大きな変化は、内勤スタッフの作業の質が上がってきたことだ。

内勤スタッフが電話で受けた顧客からの問い合わせの多くは営業に取り次いでいたが、内勤スタッフが直接対応できるようになっていった。

顧客リストを検索して、その顧客の情報を呼び出せば、これまでの取引状況が表示される。消耗品の受注も、過去の取引状況を呼び出して確認すれば、内勤スタッフが発注できる。故障の問い合わせも、過去にどんな商品を納入しているか電話を受けた段階で確認できれば、その後の対応もスムーズだ。

情報の「見える化」で営業と内勤スタッフの連携を強化

情報の「見える化」で営業と内勤スタッフの連携を強化


営業は内勤スタッフの対応の進捗状況などを外出先でもスマートフォンを通じてkintoneにアクセスして状況を把握できる。帰社後に対応していた作業も、外出中の空き時間に処理できる。帰社後の仕事量は大幅に少なくなった。その分、後回しにしがちだった、提案書作成などの付加価値の高い仕事を着手できるようになり、ビジネスの幅が広がってきた。

弘文堂の店舗。オフィスの困りごとに親身に対応してくれる

弘文堂の店舗。オフィスの困りごとに親身に対応してくれる

会社の電話をスマートフォンへ転送 顧客への対応スピードがさらに加速


弘文堂の業務改革はkintoneだけではなかった。ここからが本番だった。

新たに導入したのは、営業のスマートフォンに内線番号で呼び出したり、スマートフォンを使って外出先から会社の電話番号で発信したりできるスマートフォン連携機能「モバイルアシスト」だ。

写真はハンドセット付クレードル。モバイルアシストのライセンスが同梱されている。弘文堂では社外ではモバイルアシスト、在席時はクレードルと別アプリを使用してより効率的に電話応対をしている。

写真はハンドセット付クレードル。モバイルアシストのライセンスが同梱されている。弘文堂では社外ではモバイルアシスト、在席時はクレードルと別アプリを使用してより効率的に電話応対をしている。


「モバイルアシスト」が効果を発揮するのは、電話の取り次ぎのシーンだ。普通は、顧客から会社に外出中の営業あてに電話がかかってきた場合、営業の携帯電話には回せない。いったん電話を切って営業に別途連絡をする作業が必要になり、内勤スタッフも手間がかかり、かつ営業がいつ折り返し電話できるかは、営業のスケジュール次第だ。だが、このツールを使えば、かかってきた電話を内線番号で直接、簡単に外出中の営業に取り次ぎができるのだ。

顧客からの電話をいったん切ることによって起きる機会損失のリスクは意外と大きい。営業がかけ直すと、電話中だったり、不在だったりして対応が遅くなるケースも発生するが、そんな課題をクリアし、営業は外出先で対応できるようになった。

kintoneの活用で内勤スタッフによる顧客対応が可能になったが、営業が対応したほうがいいか迷うことがあった。それもモバイルアシストのおかげで、営業に転送して判断してもらい、その場で対応できるようになった。

当然ながら、営業しか対応できないクレームなどの急ぎの案件に大きな効果を発揮する。顧客を分かっている人間が速やかに対応することが重要なだけに、これだけでも導入の価値があるにちがいない。

全社で対応することで、顧客の信頼感を高める


昨今、会社の代表電話以外に営業の携帯電話で顧客と直接やり取りするケースも増えているが、対顧客の業務が営業に集中し、会社側から見ても、個々の営業の状況が目に届かず、ブラックボックス化してしまう恐れがある。また、モバイルアシストとkintoneとの絶妙な組み合わせで、営業担当者だけでなく、会社全体で対応してくれている、との印象を顧客に持ってもらえる。

さらに、モバイルアシストは、新人の教育においても強みを発揮する。

新人の営業は、顧客から電話を受けてもすぐに回答できないケースが発生する。そうなると顧客を待たせてしまい、受注機会を逃す可能性がある。経験の乏しい新人営業を会社全体でサポートできるよう、新人はモバイルアシストを使って、会社の代表番号を経由して顧客に電話をかける。そうすることで顧客からは会社宛てに電話がかかってくるので、経験豊富な内勤スタッフが電話を受けて十分にサポートをすることができる。

kintoneとモバイルアシストによる営業と内勤の連携強化によって、「内勤スタッフに対応力がついてきて、電話で数十万円の商品を受注するケースも出てきました」。植木社長が目指すチームプレー経営が大きく前進し始めた。

ICTの力で営業のビジネスモデルが大きく変化、DXの領域へ

町田で50年以上の営業を続けている弘文堂の店舗

町田で50年以上の営業を続けている弘文堂の店舗


オフィス用品を扱う弘文堂にとって、ライバルは近隣の同業者だけではない。全国にネットワークを広げるEC(電子商取引)サイトという強敵も立ちはだかる。ライバルに対抗するためには、ビジネスの最前線に立つ営業の機動力は欠かせない。限られた人材を有効に活用し、これまで以上の顧客サービスを提供しながら、新たな顧客を開拓する。一見すると、難しいテーマもICTを活用することで、その可能性は見えてくる。

特に今回のようにモバイルアシストとkintoneの組み合わせによって生まれる顧客との強固な信頼関係は非常に大きな強みとなる。

「新型コロナウイルス感染拡大の中で、ICT導入のハードルは下がっています。中小企業の経営者は、休日返上で頑張っている方が多いですが、そんな時間も減らせます。ハードルが低い今だからこそチャレンジしてほしい」。ICTの活用に踏み切れない中小企業経営者に植木社長はこうアドバイスしていた。

弘文堂は、顧客への対応を個人から会社単位に変えることで、営業力と顧客満足度を向上させ、さらに進化しようとしている。その取り組みは、旧来型のビジネスモデルをICTによって変革させ新たな成長につなげるDX(デジタル・トランスフォーメーション)を具現化している。ぜひ参考にしてほしい。

事業概要

法人名

株式会社弘文堂

所在地

東京都町田市木曽西4-9-3

電話

042-792-2141(代)

設立

1968年12月

従業員数

9人

事業内容

オフィス機器・家具、セキュリティ機器・業務アプリなどの販売、事務用品・はんこ・ゴム印・各種印刷・卒業記念品、ノベルティの販売・制作など

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