事例集

2021.12.14 06:00

2019年の台風19号を機にクラウド化とWi-Fi導入でサービス向上を加速 ふじみ野福祉会(埼玉県)

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高齢化社会の到来を見据え、介護保険制度が2000年に導入されてから20年以上が経った。対象となる65歳以上の高齢者が人口に占める割合は、2000年の17.4%から2020年の27.3%へと約10ポイント上昇。進む少子化とも相まって、割合は今後ますます上がっていく。

地元に高齢者施設を・・・


「高齢者の方々が、住み慣れた場所で生き生きとした生活を送れるようにするサービスが、もっと求められるようになります」。埼玉県富士見市で、「むさしの」「ひだまりの庭 むさしの」という、2つの高齢者のための施設を運営するふじみ野福祉会。吉原孝好理事長はこう話して、施設やサービスの充実に取り組む決意を示した。

県庁職員から転進した吉原孝好理事長

県庁職員から転進した吉原孝好理事長


「1990年代の終わりごろでした。埼玉県庁の福祉部に勤務してしましたが、地元の富士見市に特別養護老人ホームが市営のもので1ヶ所しかないことが、気になっていました」。介護保険制度の導入が必要とされるくらい、国にとっても大きな課題となることは明白だった。「その課題解決に向けて、特別養護老人ホームの設立に取り組みましたが、当時は、30代後半で県税事務所の課長の職にあったことから、法人運営は叔父にお願いしました。」
土地は実家が持っていたものがあったが、周囲は田畑が多く、作付けに影響が出ると反対する声も出た。荒川の支流となるびん沼川が背後を流れ、合流する荒川も近く洪水の不安もあったが、地域に必要だという思いから交渉を重ね、自費にて排水設備も整えて2003年4月1日、「むさしの」を開設した。

2003年に開設した特別養護老人ホーム「むさしの」

2003年に開設した特別養護老人ホーム「むさしの」


それから18年。「ご意見を戴いた地域の方々も80歳近くなって、今では施設を利用して戴いています」。地域のニーズに寄り添い、溶け込んでいきたいという思いは、2012年の地域密着型特別養護老人ホーム「ひだまりの庭 むさしの」開所へと至らせた。外観を近隣の住宅と同じようにしたことで、家庭の延長のような気持ちで利用できる施設となっている。

ICT化については、県庁での福祉部時代に職員同士の情報交換の必要性を感じていた吉原理事長は、「開設と同時に当時の施設長に相談し、できるだけ一人一人にパソコン環境を用意し、その情報をサーバーに集約させ、作業効率化を図り、情報を一元整理し、誰もが情報を見る事が出来る共有環境に情報を入れました。その後グループウエアを導入し、スケジュールの共有や利用者の情報の共有等、利用者へのサービスの充実を図りました」と語った。

2014年に開設した地域密着型特別養護老人ホーム「ひだまりの庭 むさしの」」

2014年に開設した地域密着型特別養護老人ホーム「ひだまりの庭 むさしの」」

台風19号で浸水の危機


河川が近いという不安は、2019年10月に上陸した台風19号で現実の問題となった。「近くまで水が押し寄せて湖の中にいるようでした」(TOP画像参照)と、吉江孝行施設長・理事は振り返る。「ふじみ野福祉会は先ほど、吉原理事長が説明したように情報の共有化を大事にしていて、誰もが同じフォルダにアクセスして、給与や入所者の個人情報などを除いて閲覧できるようにしていたんです」。そうしたデータが搭載されたサーバーが水没する心配が出てきた。「職員に集まってもらい、1階にあるサーバーとパソコン25台を3階へと運び上げました」。

「むさしの」でICT改革を進める吉江孝行施設長

「むさしの」でICT改革を進める吉江孝行施設長


幸いにして浸水は免れたが、温暖化も進む状況でいつまた同じ状況に陥るか分からない。安心して情報管理ができるようクラウド化を進めるために、施設内にWi-Fiを導入して、ネットワーク環境を充実させた。

Wi-Fiの導入で、オンライン面会、災害対策セミナーと利用が広がった


「タブレットなどのモバイル機器から、共有フォルダにアクセスできるようになりました」と吉江施設長。このWi-Fi導入が、思いもよらなかった新しいサービスを生み出した。「コロナ禍において、ハイリスクの高齢者が入所していることもあって、ご家族の面会にも制限がかかりました。その中で、入所者のおひとりが100歳の高齢者表彰を国から受けたので、Zoomを使って表彰者と神奈川にいるご家族とを繋いでお祝いをしました」。

100歳の方のZoomを活用した高齢者表彰風景

100歳の方のZoomを活用した高齢者表彰風景


実際に対面できることが1番だが、状況が許さなくても“面会”がかなうこの仕組み。地域合同防災訓練では、「国交省の方に施設まで来て戴いて、そこから災害対策に関する講演の様子を、4つある町会の人たちが集まった会場に配信することも行いました」と吉江施設長。施設が地域貢献の中心となることで、事業への理解もいっそう進んでいく。「集まることができないと、人は疎遠になっていきます。地域にとってそれは良くない。地域の人たちを結ぶ拠点に施設がなれたら嬉しい」と、吉原理事長も期待を寄せる。

 災害対策に関する講演の様子(「むさしの」から配信し、各集会所につなぐ質問等も可能)

災害対策に関する講演の様子(「むさしの」から配信し、各集会所につなぐ質問等も可能)


Wi-Fiの導入は、入所者の様子を見守るサービスの向上にも繋がりそうだ。もともとベッドの下にパッドを置いて、横になっているかどうかを確認するセンサーはあった。これに加え、「ベッドの脚にセンサーを置くことで、落下しそうになったり、ベッドの端に腰掛けていたりするのを感知できるベッドセンサーを入れていきます」と吉江施設長。「ほかにも色々と活用できる可能性があると思います」。そのための提案を、現場から受けて実施に移す土壌が、ふじみ野福祉会には根付いている。

5名の課長と6名の管理者で3ヶ年計画作成に取り組む


ふじみ野福祉会では地元の富士見市の計画と連動する形で2021年3月、130人ほどいる職員の代表である課長・管理者が職場内研修において、これからの施設運営に必要なこととして3カ年計画にとりまとめた。この中には、「データのクラウド化を実施します」(管理課)や、「介護記録や職員の情報共有等を効率化するために業務を見直し、スマートフォンの活用等を行います」(地域課)といったデジタルシフトに関わる目標が示され、着々と実施に移されている。 「職員のICTやIoTに対する意識が高まっている感じです」と吉江施設長。水害への懸念、そしてコロナへの対応から進めた部分もあったICTやIoTへの取り組みだが、情報を共有化して、誰もが自主性を持って活躍できる場を整えたことで、広がる可能性を見せている。

ますます進む高齢化社会の中、高まるニーズに応えるには「やはり人材が大切です」と吉原理事長。3カ年計画の中にも、「直接雇用職員を増やし、派遣職員に頼らない施設を作ります」(管理課)といった課題が挙げられ、長く働いてくれる人を求めていこうとしている。そのためには、高齢者の方々によって親しみやすい施設を作る一方で、働く職員たちが働きがいを得られる場所でもあることが大切となる。

ボトムアップ型の提案に迅速に応じ、タブレット機器やWi-Fiの導入などICT化、IoT化に取り組んで整えてきた環境がそうした条件を満たし、次の時代に向けた高齢者のための施設の形を作り出していきそうだ。

上記のような背景には、施設開所当初から、パソコンでの業務を入職の条件にしていたことが上げられる。ICTリテラシー教育に悩む中小企業も多いが、ふじみ野福祉会のように理事長が明確にデジタル社会への対応を示し、課長・管理者を中心にICTに取り組み、ICTを前提として入所者へのサービスを全員で考える。既にその時点で大きな差が生じている。もちろん早く取り組みすぎて時期尚早のケースもあったようだが、積極的に新しいことに取り組むという姿勢は組織の活性化に大きく役に立つ。これからもふじみ野福祉会に期待したい。

会社概要

法人名

社会福祉法人ふじみ野福祉会

本社

埼玉県富士見市南畑新田16番地1

電話

049-255-6102

設立

2001年12月12日

従業員数

130人

事業内容

特別養護老人ホーム/ショートステイ/デイサービスセンター/ヘルパーステーション/支援センター(2ヶ所)/地域包括支援センター(2ヶ所)/配食サービス/地域密着型特別養護老人ホーム/小規模多機能型居宅介護

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