事例集

2021.12.07 06:00

センサーとセンサー連動カメラで入所者のプライバシーと安全を両立 真愛あらたホーム(兵庫県)

センサーとセンサー連動カメラで入所者のプライバシーと安全を両立 真愛あらたホーム(兵庫県)
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ミナト神戸の山の手、神戸大学医学部附属病院に近い住宅街で2020年6月に開設された真愛あらたホームは、社会福祉法人イエス団 神戸高齢者総合ケアセンター真愛が運営する診療所を併設した特別養護老人ホームだ。これからの時代の新しい介護を目指し、プライバシー保護とふれあいを両立する「ユニット型」の介護スタイルに対応し、ICTを活用した高齢者の「見守り」システムを採用している。

ユニット型で家庭的な介護を実践。

吹き抜け空間を設け明るい雰囲気の施設内

吹き抜け空間を設け明るい雰囲気の施設内


「その人の今を大切にし、普通の暮らしを守り、最期まで寄り添うことが真愛の理念です。入居している高齢者のみなさん、その家族の方々、施設で働いている職員にとって心地よい施設であるために見守りシステムは大きな役割を果たしてくれています」。取材に訪れた10月下旬、施設長の松浦慎介さんは、満足そうに話した。

「ユニット型」とは、入居者を1ユニット10人以下のグループに分けて専任の介護職員を配置しなじみの関係をつくり、一人ひとりの個性と生活リズムを尊重した個別ケアを実現する手法である。従来型の特養が4人部屋を主流とするのに対し、ユニット型は全室個室で共有のリビングスペースとセットで運用する。12ユニットを設けるあらたホームでは、110人が入居しており、介護、看護、事務に携わる20代から70代までの約80人の職員が入居者の生活を支えている。

自然光が差し込むように2カ所の吹き抜け空間を設けた施設内は明るい雰囲気に包まれている。それぞれの個室はリビングスペースを囲むように配置されている。認知症の入居者が外部へ1人で外出しないよう、エレベーターを動かすのに暗証番号を必要とするなど様々な対策を講じている。

徘徊を防止するための暗証番号が必要なエレベーター

徘徊を防止するための暗証番号が必要なエレベーター

プライバシー保護と事故防止対策の両立に向けた課題


真愛は2019年から、あらたホームの設立準備を始めた。そこで課題として浮上したのが、「プライバシーを守りながら個室内での入居者の安全をどのように確保するか」ということだった。

原則、要介護3以上の高齢者を対象とする特養は、単独での立ち上がりや歩行が困難な入居者が多く、個室にいるときに転倒してしまう可能性がある。最悪の場合、転倒し骨折することによって、その後の生活の質に大きな影響を与えることもある。

「転倒が起こっても、実際にその場面を見ているわけではないので、医師やご家族に説明するときに想定に頼らざるを得ないところがあります。しかし、常時、カメラなどで監視していてはプライバシーが保てなくなってしまいます」(松浦さん)。

すべての個室に「見守り」システムを導入


この二律背反する課題を解決するためにすべての個室に導入したのがカメラと行動分析センサーが一体になった「見守り」システムだった。

カメラは、センサーが異常を検知したときにスマートフォンを通じて入居者のライブ映像(モノクロ)を見る事ができる。しかし、通常は見る事が出来ない仕組みだ。カメラは平らな形状で天井に付設され、センサーも目立たないデザインなので入居者はシステムを意識せずに生活を送ることができる。

「シルエットで様子を確認できるセンサーも検討したのですが、ライブ映像がより具体的に状況を確認できます。入居者のプライバシーの保護と安全、安心を両立する機能を持っていることが採用の決め手になりました」と松浦さんは導入当時の経緯を振り返った。

カメラとセンサーを意識しないで済むようにデザインされた個室内 中央上の照明の右上にあるのがカメラとマイク&スピーカー。右側の壁に小さく見えるのがセンサー

カメラとセンサーを意識しないで済むようにデザインされた個室内
中央上の照明の右上にあるのがカメラとマイク&スピーカー。右側の壁に小さく見えるのがセンサー


システムはベッドでの起床、離床、転倒、転落などの行動をセンサーが認識すると職員が持つスマートフォンに映像付きで通知する仕組みになっている。通知はそれぞれの転倒転落リスクに応じて設定することが可能。脈拍数や呼吸などのデータを集め、異常があったときに通知するといった設定もできる。プライバシーに配慮して映像は通知の時以外は見ることができないようになっている。

「通知があったときの状況を映像で確認できるので、職員が『すぐに訪室しなければならないのか、スマートフォンを通じた声かけで大丈夫なのか』といった判断ができます。個室の間を必要以上に行ったり来たりしなくて済むので、職員が余裕を持って入居者に接することができます。負担が減る分、自然なコミュニケーションができているようです」と松浦さんはその効果について説明した。

職員のスマートフォンに送られてくる映像

職員のスマートフォンに送られてくる映像

入居者の事故防止対策に効果的な録画機能


録画機能が付いていることも役立っているという。「転倒転落事故が起きて原因がはっきりしないと担当の職員は責任を感じ、気持ちの面でその責任を引きずることもあります。録画ではっきりと原因究明できるようになったことで、職員に心理的な負担をかけないで済むようになりました。また、ご家族と録画を見ながら対応策を共有することもできますし、システムを通じて安心感を与えることができればと考えています」(松浦さん)

職員数が減る夜勤時の負担を軽減


職員は交替しながら24時間、入居者を見守っている。システムが特に効果を発揮するのが職員の人数が減る夜勤の時間帯だ。夜勤の場合は1人の職員で2ユニットの18~19人を担当するが、寝る前や起床時などはナースコールが重なることがある。そういった時も映像を見て根拠を持って優先順位を決めることができる。「心理的な負担を減らすことができるので職員に好評です。今までは、勘と経験に基づく優先順位の判断をしていましたが、システムがあれば経験が浅い職員でも的確に対応できます」と松浦さんは話した。

施設内は通信ネットワークが充実しており、コロナ禍で直接の面会が難しかったときは、タブレットでオンライン面会を行うなどほかにも積極的にICTを活用している。診療所を併設していることも入居者、家族、職員の安心につながっている。

ICTで、利用する人に喜ばれる施設に

個室が並ぶあらたホームの館内

個室が並ぶあらたホームの館内


あらたホームでは年度当初、6人のリーダー介護職員を中心に年間を通じて、入居者の生活歴や意志に基づく取り組みをチームで検討した。そして、リーダー介護職員がチームで検討した取り組みを責任者にプレゼンの上、決定した取り組みを実施している。「高齢者にとって、その人の意志に基づく社会参加は生活の質の重要な要素となります。例えば映画が好きな人のために映画の上映会を開いたりすることで、その人の思い出を呼び起こすなど気持ちの面で満足していただける。そういった視点から様々なアイデアが出てきました。これからも現場からの声を大事にすることを心掛けていきたい」と松浦さんは力を込めて話した。

著しいデジタル技術の進歩や社会の変化に対応するために、職員が積極的に福祉以外の領域に関心を持つことが重要と考えている。「ICTやロボットを活用することで職員の身体と心の負担をさらに軽減できるよう幅広く情報を集めていきたい」と話す松浦さん。人を生かすために技術を積極的に活用するその姿勢が、これからの新しい特養のモデルケースを作りつつあるといえる。

事業概要

事業所名

特別養護老人ホーム 真愛あらたホーム

本社

神戸市兵庫区荒田町3丁目47―1

電話

078-335-8120

設立

2020年6月1日

従業員数

80人

事業内容

ユニット型特別養護老人ホーム、空床型ショートスティ

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