事例集

2021.11.30 06:00

書店の知的プラットホーム化で新しい価値創出 ニューコ・ワン(熊本県)

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制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)傘下の大型書店チェーン、蔦屋書店と提携する熊本市のニューコ・ワンが、地域での企画やビジネスを生むプラットホームとして、書店を運営する取り組みを進めている。デジタル技術を活用して人と人をつなぐことで新たな価値を創出しようとしている。

書店だからこそのサービスを提供する

人と人とのコミュニケーションづくりを熱く語る塩原礼貴社長

人と人とのコミュニケーションづくりを熱く語る塩原礼貴社長

「電子書籍や書籍のインターネット通販の普及で書店の経営環境は厳しく、書籍の販売だけではビジネスとして成り立たちにくくなっています。ネットではできないリアル店舗だからこそ可能なサービスを提供していかなければなりません。書店は知的好奇心を通じて人と人をつなぐことができます。その特徴を生かした新しいビジネスを書店から作り出していこうと考えています」。熊本県を代表する繁華街、下通に立地するビル内にあるニューコ・ワンの本社で、塩原礼貴社長は今後のビジョンを語った。

宮崎県にあるTSUTAYA BOOKSTORE 宮交シティ

宮崎県にあるTSUTAYA BOOKSTORE 宮交シティ


塩原社長はCCCの出身。2015年にニューコ・ワンに取締役として着任し、2018年に社長に就任した。就任以降、熊本県を中心に福岡県、宮崎県に広がる書店28店舗の運営に加え、保険代理店、学習塾、コンサルティングの各事業に乗り出すなど多角化を進めている。

クラウド化で業務効率化を実現


事業の多角化の一方、給与と会計のシステムをクラウド化するなどデジタル技術を活用した業務効率化にも取り組んでいる。約160人の正社員にアルバイトを加えると従業員の総数は1000人近くになる。本社の作業量が多いため経理担当には8人をあてていたが、クラウド化した後は5人で対応することが可能になった。1日あたり6時間は必要だった各店舗の事務作業も2時間で済むようになったという。

多角的に事業を展開するニューコ・ワンのオフィス

多角的に事業を展開するニューコ・ワンのオフィス


一定の成果は上がったが塩原社長は現状に満足していない。「デジタル技術をコスト削減や業務効率化のためだけに使っていては意味がありません。ニューコ・ワンを新しいビジネスを生み出す企業に変えるために使わなければと思っています。これからはコミュニティデザインを事業の中心に据えていこうと考えています。売上高の半分を占める書店を軸に、ほかの事業との相乗効果を高めながら地域活性化にも貢献できるビジネスを創っていきたい」

新たなビジョンに沿ってニューコ・ワンが現在計画しているのが、正社員が所属部署や上司部下の関係を超えて自由に意見交換して情報を共有できる社内SNSの構築だ。その一方で、「地域資源」と位置付ける作家、デザイナー、NPOの運営者、農家、自治体関係者、教育関係者、企業関係者、博物館の学芸員ら外部人材のデータベース化も進める。

「SNSがコミュニケーションの中心になっている社会の現状に会社全体で合わせていく必要があります。従来の縦割り型の組織では新しい企画はなかなか生まれません。社内SNSが構築できれば、社員全員のフラットなコミュニケーションが可能になります。私から若い社員に直接アドバイスすることや、逆に私が気付いていないことをほかの社員から指摘してもらうことがスムーズにできるようにしたいと思っています」

「街の文化の森」をコンセプトに店舗改革

店舗マネジメントの一環として積極的に導入しているセルフレジ

店舗マネジメントの一環として積極的に導入しているセルフレジ


本社が入居するビルの1階と地下1階に広がる蔦屋書店熊本三年坂店は、書店の枠に収まらない多様な体験ができる店舗だ。近くに熊本城があり、周辺は人通りも多い。取り扱う書籍数は45万冊と県内最大規模を誇る。「街の文化の森」をコンセプトに訪れる人に常に新しい発見を提供しようと、外国の文化、古墳、天文などをテーマにしたフェアを定期的に開催している。書籍以外の物販にも力を入れ、九州の特産品を扱う「三年坂マルシェ」を運営するほか、クラウドファンディングを運営するマクアケと提携した九州発の新商品販売も展開。店舗運営の面では従業員の負担軽減とレジ前での行列を緩和するためにセルフレジを導入するなど効率化を重視している。

九州の特産品を販売する三年坂マルシェ

九州の特産品を販売する三年坂マルシェ

書店を公共空間にすることで復権を図る


熊本県内のほかの店舗でも、地域のNPO運営者、クリエイター、農家らと連携して、絵本作家が子供たちと共同で物語を作るイベントをはじめ、博物館と連携したオンラインワークショップ、絵本の読み聞かせ、農業体験などを企画してきた。

「米国では近年、公共空間として書店を運営する取り組みが広がることで書店が復権しつつあり、同じようなことが日本でもできるのではないかと考えました。当初は手探りでしたが、実際に地域との連携事業に力を入れている店舗ほど売上高が伸びています。現場で人と人を結び付けることができるのはリアルな店舗だからこそ。これはネットにはない最大の強みです」と力強い表情で塩原社長は話した。

社員が部署の枠を越えて自主イベントを考案

ニューコ・ワンの坂本絵里香業務推進室長

ニューコ・ワンの坂本絵里香業務推進室長

これらの企画は所属部署の垣根を超えて社員が自主的に考案している。例えば、農家と連携した食育のイベントは、システム構築を担当している業務推進室長の坂本絵里香さんが企画したものだ。
「普段とは全く畑違いの仕事でしたが、実際に自分でイベントを企画することで、情報発信の仕方や運営ノウハウを体験しながら学ぶことができたのは大きな収穫でした。この経験は社内SNSや外部人材のデータベースを整えていくこれからの仕事にも役立てることができますし、自分自身の社外ネットワークを広げることにもつながりました」と坂本さん。自らの経験をフィードバックすることで社員にとって使いやすいシステムにしていきたいという。

デジタルで社員の知識、人脈を可視化する

「社員ひとりひとりが持つ知識、人脈を可視化することで新しい企画が今まで以上に生まれやすくなるはずです。責任感が強い優秀な社員ほど一人で仕事を抱え込む傾向がありますが、情報の共有化が進めばほかの社員からのサポートも受けやすくなるはずです。社内と外部の人材をデジタル技術で多元的有機的につなぐことでイノベーションを熊本から起こしていきたい」と塩原社長は先を見据える。

人と人のコミュニケーションにデジタル技術を積極的に活用するニューコ・ワンの取り組みは、地域そのものをプロデュースする新しいビジネスを普及させる魁になるかもしれない。

事業概要

会社名

ニューコ・ワン株式会社

本社

熊本市中央区安政町1番2号カリーノ下通5F

電話

096-241-9250

設立

2001年1月

従業員数

993人(社員157人)

事業内容

複合書店、リテール・飲食、Tポイントエリアアライアンス、採用支援、教育、保険、コンサルティング

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