事例集

2021.07.19 06:00

外回り中も、FAX注文をクラウド経由で確認 多忙なフラワーショップの経営をデジタルでカバーする三光貿易(愛媛県)

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「フラワーショップの経営は、現場がすべてのアナログのビジネスと思いこんでいたので、以前はデジタル技術の活用を考えたこともありませんでした。でも、実際活用してみると本当に便利で、新しい取り組みに挑戦する時間と心のゆとりを持つことができるようになりました」
フラワーショップ事業が急成長している愛媛県松山市の三光貿易。そのけん引役になっている小島有留実専務(上記写真参照)はにこやかに語った。

花や植物に囲まれた生活の素晴らしさを伝えるフラワーショップ

三光貿易の本社兼店舗

三光貿易の本社兼店舗


店舗を兼ねた三光貿易の本社は、伊予鉄道のターミナル、松山市駅から3駅目の福音寺駅から約100メートルの住宅街にある。 小島専務は厚生労働省認定のフラワー装飾技能士1級の資格を持つ。取材に訪れた6月下旬、店先や店内にはアジサイ、バラ、マリーゴールド、カスミソウなど数十種類の花や観葉植物、胡蝶蘭が並べられ、華やかな雰囲気を醸し出していた。
「花の美しさを保つには手間ひまをかけなければなりません。切花の鮮度を長持ちさせる上で必要な湯あげをしてから冷やす作業、葉や茎の処理、温度管理など多くの仕事があります。バケツに入った水の入れ替えなど力仕事もありますから結構大変です。でも、子どものころから花や植物が心から好きで、いつかは関連した仕事に就きたいと思っていましたから今は毎日が本当に楽しい。花や植物に囲まれた生活の素晴らしさを多くの人に伝えたいと思いながら取り組んでいます」(小島専務)

正月、バレンタインデー、ホワイトデー、卒業、入学、母の日、父の日、お盆、敬老の日など毎月のようにあるイベントや行事の直前は目の回る忙しさだ。外から花に目を止めてひょっこりと店に入ってくるお客さんも多い。お客さんから花についてのアドバイスを求められたり、花を届けた時のうれしそうな表情を見る度にやりがいを感じるという。

店舗運営ノウハウゼロのスタートから業績を伸ばして法人化

三光貿易で扱っている花、植物

三光貿易で扱っている花、植物


夢を現実にするためフラワーショップを運営してみたいと本格的に考え始めたのは10年前だった。「店舗運営のノウハウが全くなかったので実際に地元のフラワーショップで修行するところから始めました」と小島専務は振り返る。

1年ほど花の仕入れや手入れの技術などのノウハウを学んだ後、満を持してフラワーショップ事業をスタート。社長も花や植物への造詣が深いこともあって事業を後押ししてくれた。松山市内の企業や店舗を主な顧客に、入り口や玄関に飾るウェルカムフラワーや庭園の定期管理のほか、プレゼント用の花束や新規開店のお祝いに贈る生花スタンドの製作、定期の花配達などを請け負ってきた。少しずつ得意先を増やし、得意先が新しいお客さんを紹介してくれるという好循環が生まれ、業績は年々拡大。三光貿易は2018年9月に法人化を果たした。

「花卉は在庫管理が非常に難しく、経営を軌道に乗せるまでが本当に大変でした。法人化をきっかけにようやく思い描いていたお店のイメージに近づけることができました」
その後、生花の通信配達システムの全国ネットワーク、花キューピットへの加盟も実現。花キューピットを通じた注文も増え、一昨年は年間売上高が前年比190%増と大きく成長した。その結果、仕事は忙しくなり、フラワーショップの責任者としていかに効率的に時間を使うかが大きな課題となった。

注文の9割はFAXから 外回りの間は気が気でなかった

本社の移転にあわせて複合機などを一新した三光貿易のオフィス

本社の移転にあわせて複合機などを一新した三光貿易のオフィス


「花に添えるメッセージやお名前に誤字、脱字があってはいけないので、確認できるようにお客様からは文書で注文を入れていただくようにしています。メールによる注文は少なく約9割はFAXで入ってきます」(小島専務)
贈り物の定番の胡蝶蘭、送別会や誕生日でプレゼントする花束、開店開業のお祝いや新築祝いで贈られる生花スタンドや観葉植物、結婚式でのテーブルアレンジメント、葬儀用の供花などさまざまなオーダーが連日、朝から夜まで本社の複合機に入ってくる。そのすべてに自ら目を通しているため、注文が増えたことでその分時間も取られるようになった。

小島専務は、花束や生花スタンドの製作や店舗の管理以外に卸売市場からの仕入れも担当している。午前中に松山市内の花卉市場に赴くことが多く、配達や契約先の定期管理で外に出ることも多い。出ている間は、いつ新しい注文が入ってくるかいつも気になり、気が休まることがなかったという。

スマホやタブレットで確認できるFAX注文のクラウド閲覧システム

外出時に来るFAX注文をクラウド経由で確認しているタブレット

外出時に来るFAX注文をクラウド経由で確認しているタブレット


「隙間時間に本社に注文の有無を確認するための連絡を入れたり、一旦、本社に戻って、届いている注文を確認し、処理してまた出かけるということを繰り返していました。そのときは当たり前と思っていたのですが、本当に時間を無駄使いしていたと思います。新しいことに挑戦する余裕が無くなり、この状況を長く続けるのは難しいのではないかと悩んでいた時に、リコージャパンの担当者の方に便利なFAX注文のクラウド受信システムのことを教えていただきました」と小島専務は振り返った。
1年前に交通至便な現在の場所に本社を移転し、複合機やパソコンを一新したのに合わせて、複合機に届いた文書を、スマホやタブレット端末にクラウド経由で転送するシステムを導入した。たったひとつ新しいシステムを導入し、仕事のやり方を変えただけで当初思っていた以上の効果を実感できたという。

「お祝いやお悔み用の急なオーダーも多いのですが、システムのおかげでお客様をお待たせすることなく、迅速に対応できるようになりました。どこにいても注文が確認できるので、すぐにお客様に電話で連絡を取って具体的な要望をお聞きし、在庫がなければ市場に連絡して必要な商品を調達できるので、仕事を回しやすくなりました。注文の取りこぼしがなくなったので、売り上げの拡大につながっています。印刷機能も向上したのでメッセージカードや木札などの印刷物もスムーズに作ることができるようになりました。なによりありがたいのが気持ちの面で余裕が生まれたことです。広い視野から先のビジネスを考えることができるようになりました」

先を見据えてスタッフの成長をサポート


仕事をシェアリングして、さらに新しい取り組みに乗り出す時間を作るために力を入れているのがスタッフの技術力の強化だ。2年前に取得したフラワー装飾技能士1級の資格取得をスタッフにも勧め、練習に使用する花材代を補助するなどサポートしている。
「1級は豊富な実務経験と高度な専門知識が求められるので、装飾の作業だけでなく植物や安全衛生についての知識を深めることができます。無資格でもフラワーショップの運営や装飾の仕事に携わることは可能ですが、資格を取得することで技術を証明できるだけでなく勉強を通じて自らの経験と知識を整理することもできます。また、大きな仕事が入ったときでも臆せず取り組める自信にもつながるはずです。スタッフの頑張ろうという気持ちをできる限りサポートしていきたいと考えています」。小島専務は表情を引き締めてそう話した。

デジタルを活用した新しい取り組みを検討

ジャイアントフラワーの作例(天井まで届きそう)

ジャイアントフラワーの作例(天井まで届きそう)


新規事業の一環として結婚式などの装飾品として人気が高まっている造花、ジャイアントフラワーに着目している。その素材となる熱加工が可能なカラー高級紙を輸入する事業部を新設し、今後、ジャイアントフラワーの作り方についての講座を企画することも考えている。

ジャイアントフラワーの素材となる高級紙のロール

ジャイアントフラワーの素材となる高級紙のロール


「オンラインを活用して関心を持つ人を地域の枠を越えて集めることにも挑戦したい。海外に発信することも検討していきたいと思っています。デジタル技術についてはまだまだ勉強の段階ですが、知れば知るほど新しい可能性が広がっていきそうで、これからが本当に楽しみです」
目を輝かせて話す小島専務。デジタル技術に関心を持ったことが、時間と精神の余裕を生み、新しい事業アイデアの創出につながっている。三光貿易の花や植物をベースにした新しいビジネスの展開に期待したい。

会社概要

会社名

三光貿易株式会社

本社

愛媛県松山市福音寺町523―3

電話

089-904-1215

設立

2018年9月

従業員数

6人

事業内容

フラワーショップ経営、建設業、輸入業

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