事例集

2021.05.14 06:00

100万枚の書類を3週間で一掃 開放的な職場をつくる サーラビジネスソリューションズ(愛知県)

100万枚の書類を3週間で一掃 開放的な職場をつくる サーラビジネスソリューションズ(愛知県)
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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


オフィスの片隅にうずたかく積み上げられた段ボール。ファイルでびっしりと埋まったキャビネット。机の上には、雑然と置かれた書類の山…。愛知県豊橋市のシステム保守・運用会社、サーラビジネスソリューションは2020年10月、数多くの企業が頭を悩ます、そんな問題の解決にチャレンジした。約3週間かけてオフィス内の無駄な書類を一掃。処分した書類はA4用紙換算で、ざっと約100万枚分にも上った。すべてを積み上げると、100メートル以上の高さになる量だ。


「現在、約40人の社員が1フロアで日常業務をこなしていますが、毎年2人程度の採用を計画しています。ところが、オフィスに空きスペースがない。これはなんとかしないといけない。もう待ったなしの状況だったんです」と、同社管理グループの山本敏雅マネージャーは、書類の整理に踏み切った背景を話してくれた。

70年代から残る書類がオフィスを圧迫


サーラビジネスソリューションズは、都市ガスやLPガスの供給などのエネルギー事業や都市インフラ整備、ハウジングなど幅広い事業を展開するサーラグループ46社の基幹システムやネットワークシステムの開発・運用・保守などを担っている。グループ社員約4600人の人事や給与、販売などのデータを管理。北海道から広島まで広がるグループの事業エリアをネットワークでつなぎ、グループの“中枢神経”ともいえる役割を果たしている。


創業は1970年。中核のガス事業の顧客データなどの処理を請け負うシステム管理子会社として設立され、その後、グループの事業拡大とともにシステムの対応領域を拡大していった。50年の歴史とともに、オフィス内にはその当時からのレガシー(遺産)ともいえる書類が数多く残されていた。

「設立当初から使っていたシステムに関連する資料や古い会計書類などもありました。段ボールの箱に入れて、会議室のデッドスペースに置いたままになっていたり、キャビネットがいっぱいで、机の上に書類が雑然を置かれていたり。日々の業務に追われて手がつけられず、どうしたらいいのかも分からない状況でした」と山本マネージャーは語る。そこで、書類削減のサポートを依頼したのは、ネットワークサービスの導入・保守で以前から取引のあったリコージャパンだった。

リコージャパンは、働き方改革や生産性向上に役立つオフィスの文書管理のコンサルティングサービスを展開しており、さまざまな企業の書類に関する悩み事を解決してきた。これまでの実績を踏まえ、書類の管理方法を提案。保管する必要のある書類を一時的に預かり、必要に応じて文書を引き出したり、書類が不必要になった段階で処分したりするサービスなども提供している。

まずは専門スタッフがオフィス内の文書の状況をチェック。オフィス内の場所ごとの書類量や書類の種類などを数値化する一方、捨てていい書類、捨ててはいけない書類を仕分けする判断基準などを作成した。書類の廃棄は、社員全員の理解と協力がないと達成できないプロジェクトだ。全社員を集めてセミナー形式で削減方法のレクチャーをしてもらった。

1年以上前の書類はみることはほとんどない!


「レクチャーの中でうかがった『ナレムコの統計』の話は感銘しました」と山本マネージャーは振り返る。「ナレムコの統計」は、米国の記録管理評議会(NAREMCO)の調査統計で「事務員がみる書類の90%は1年以内に作成されたもので、1年以上前作成されたものは1%しかみない」という“法則”だ。この考え方は書類を仕分けする判断の大きな参考になったという。

改善前のオフィス

改善前のオフィス


「こういうプロジェクトをスムーズに進めるには、先頭を切って旗を振る役割をしてくれる人がいないといけない」と、山本マネージャーは、管理グループ業務チームの和久田道広チームリーダーをこのプロジェクトの指揮者に指名した。

和久田チームリーダーは、リコージャパンのアドバイスのもと削減作業のスケジュールや手順などの計画をまとめ、それに合わせて社員に書類の整理を促した。「毎朝、関係する人に書類が並べられているキャビネットや書棚の前に集合してもらって、『これは必要か、必要でないか』と聞いて回って、必要でない書類はとことん全部捨てていきました」と和久田チームリーダー。不要な書類はみるみるうちに減っていった。

60%の書類を処分…目標以上の成果


当初、目標としていたのは、書類全体の20%の削減だったが、実際には全体の60%以上も減らすことができた。整理にかけたスケジュールは2週間ほどだったが、会議室のデッドスペースにあった箱はなくなり、ファイルがびっしり埋まっていたキャビネットはがらがらになった。「作業が終わった時、成功したという達成感がありましたが、一方、ちょっと捨てすぎちゃったかなとも思いました」と和久田チームリーダーは笑顔をみせた。


リコーが提供するドキュメントライフサイクルサービスも活用。決算期にその効果が表れたという。「これまで決算が終わると、古い資料を箱に入れて、山積みの箱の上に移動する作業がありました。でも、今は、リコー指定の預け入れ先に宅急便で送るだけでよくなりました。それまでは、作業服を着て、顔は真っ黒にして作業していましたが、今は汚れることはないので、スーツのままです。本当に楽になりました」と和久田チームリーダーは喜ぶ。預けた書類も法定の年数が過ぎた段階で、「捨てて」とメールで指示するだけで処分してもらえる。作業の大幅な改善にもつながっている。

書類の削減で、狭いと感じていたオフィスは、見違えるようにすっきりと広くなった。オフィスのレイアウトもリニューアル。老朽化していた机やキャビネットを一新。机の配置もこれまでよりも間隔を広げて配置。対面にならないよう少しずつずらしたり、パーテーションを設けたりして新型コロナウィルスの感染対策を強化した。また、社員同士がコミュニケーションをとけるよう、くつろぎスペースを新たに設けるなどオフィス空間を有効活用している。

オフィスのペーパーレス化推進のきっかけに


この連載では、ICTの活用に踏み切れない中小企業経営者のみなさんに活用事例を紹介している。そのテーマからすると、今回紹介したサーラビジネスソリューションズの取り組みは、デジタルというよりは、むしろアナログ的だ。だが、過去に積みあがったレガシー(遺産)ともいえる書類の処分は、デジタルの活用と切っても切れないつながりがある。


今回の取り組みには、無駄な書類をため込まないことやペーパーレス化の重要性を社員一人ひとりの意識の中に植え付ける効果がある。山本マネージャーによると、書類を複合機でスキャンして、データとして保管する社員も増えてきたという。

捨てられない書類もデジタルデータで保管することによってオフィス内にため込まなくてもよくなる。グループウエアを活用して資料や決裁書類などを閲覧・回覧できるようにすれば、紙そのものがいらなくなる。ICTを活用したペーパーレスを推進するステップになる。

デジタルか、アナログか、という問題以前に整理整頓をすることで、仕事が効率的になる。それと同時に、組織の風通しやコミュニケーションも活発になる傾向がある。オフィスを見渡して、不必要な書類がないか探してみたらどうだろうか。そんな書類を整理することで、オフィスに有効な空間が生まれるだけでなく、コミュニケーションが活発になって、新たなビジネスの可能性が生まれる。

会社概要

会社名

株式会社サーラビジネスソリューションズ

本社

愛知県豊橋市白河町100 サーラプラザ豊橋

電話

0532-32-5151

設立

1970年10月

従業員数

37人

事業内容

サーラグループの基幹システム、ネットワークインフラの開発・運用・保守

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