事例集

2021.04.16 06:00

FAX受注業務は、顧客対応と手間が大きな課題! 複合機活用でクラウド受注管理に移行 三宝化成(大阪府)

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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が日々新聞に登場する時代に、日本ではいまだに企業間の受発注関係はFAXが多い。
自社内は、業務システムで完全デジタルデータ化しても、他社とのやりとりはそれぞれ別々のシステムなので系列でない限りデータ連携は難しく、FAXが主になってしまう。
FAXから出てくるのは紙なので、担当者に渡し、担当者が対応する。他の人間は分からないので、担当者が忙しいときや外出中は、対応がストップしたままになる。ひどいときは、担当者が忘れていて、取引先からおしかりを受ける時もある。

日本を代表するものづくりのまちで、新本社の建設とともにFAX受信の問題を一気に解決し、従来の紙中心の業務から脱却した企業が大阪府東大阪市の三宝化成だ。

容器のファブレス企業 2000種類をラインナップ


「セキュリティで管理された社内及び社外のネットワーク環境を整備したことで、新しい企業に生まれ変わったような気がします」。
大阪府東大阪市内で2021年1月に完成したばかりの新社屋に設けた約260平方メートルのショールームで、岸本圭司社長は話した。
新社屋は2階建て。1階のショールームは、デザインや色もさまざまなプラスチック容器など約1000種類のサンプルがバランスよく配置され、ガラスで仕切られた開放感のある5つの部屋が設けられている。無線通信のルーターも設置しているので、訪れた人は商談の後、報告書の作成などひと仕事することも可能だ。2階にあるオフィスのネットワークは無線通信を中心にしているので配線類は少なくすっきりとしている。

1000種類のサンプルが並ぶ三宝化成のショールーム

1000種類のサンプルが並ぶ三宝化成のショールーム


容器、びんの生産・販売会社として1977年に創業した三宝化成は、企画に特化して製造設備を持たないファブレス企業だ。理化学研究用、医療用、工業用、トイレタリー、コスメティクス、食品用など取り扱っている容器のラインナップは2000種類にのぼる。
創業地の大阪市浪速区から、日本有数のものづくりエリアとして知られる大阪府東部の東大阪・八尾地域に移って事業を拡大してきた。品質を重視しているため、取り扱う商品の90%は国内生産。東大阪・八尾地域を拠点としているのは、要求に応えてくれる高い製造技術を持つ企業が多いからだ。

取引先からのFAX注文は個々の担当者が個別に対応していた

岸本圭司社長

岸本圭司社長


2015年9月に創業者の父親から社長職を継いだ岸本社長は、「人」、「商品」、「お金」を3つの宝とし、それぞれに愛情を持って取り組む「三宝愛」を理念とするコーポレートスローガンを打ち出すとともに、長期にわたって存続する企業としての土台を固めたいと考えていた。

就任以来、目標としていたのが、古くからの取引先や新規の顧客に「自社製品を、見て、触れて、実感してもらう場」としてのショールームの設立だった。
その一方で、取引先からの紙による発注の受け付けと応対が中心となった業務スタイルを変えたいと思っていた。FAXなどで送られてきた注文情報が一部の社員に集中し、他の社員は対応できなかった。
目の前の仕事に追われた担当者が、忙しさから注文の処理が後回しになり、取引先を長期間待たせてしまうことがあった。大量の書類の中に注文書が紛れてしまい、探し当てるのに大騒ぎになったこともあったという。
「社員一人一人が、それぞれ仕事を抱え込む傾向がありました。責任感が強いことの裏返しなのですが、それが悪い方向に出てしまうときがありました。注文の情報を相互チェックできる仕組みが必要でした」と岸本社長は振り返った。
「対応が遅い会社」と印象を持たれてしまうとほかのメーカーに乗り換えられ、その結果、知らない間に顧客を減らすことにつながる。最悪の場合、会社の存続に影響する場合もある。紙で保管していると場所を取るだけでなく、紛失のリスクもある。

コロナ禍の中、新社屋でデジタルネットワーク化とショールーム 2つの課題を解決


岸本社長は、他の手の空いた人間が対応できるようにするためには、情報の共有化によるデジタル化が不可欠と考えた。一気にデジタル化するには新しく社屋を設ける方が効率的だ。ショールームも併設すれば2つの課題が一挙に解決する。
そう考えて、東大阪・八尾地域の交通アクセスが良好な場所で新本社兼ショールームを設けることを検討してきた。だが、条件に適う物件はなかなか見つからなかった。
動きがあったのが、新型コロナウィルスが蔓延しだした昨年初頭だった。東大阪市役所や中小企業基盤整備機構のインキュベーション施設などが集まる市内の主要ビジネスゾーンで、大阪メトロ荒本駅に近い幹線道路沿いの場所に、約700平方メートルの用地が売却に出ているとの情報がもたらされた。
「コロナ禍で先の見通しが効かない中、会社にとっては大きな投資になりました。社内には慎重論もありましたが、先を見据えた時に、今、動かなければ大きなチャンスを失うことになると考え、勝負をかけました」と岸本社長は熱い口調で話した。
決断すると動きは早かった。わずか1年で、最新のネットワークインフラを装備した新社屋を完成させた。現在、社員の約半数が勤務している。

受注FAXのクラウド情報共有で顧客を待たせない対応を実現

ネットワークセキュリティで管理された三宝化成のオフィス

ネットワークセキュリティで管理された三宝化成のオフィス


新社屋の建設とともにリコージャパンのバックアップを受けてさまざまなICTを導入した。その中で、大きな効果を発揮しているのが、複合機と連動したクラウドストレージを活用する情報共有機能だ。複合機にFAXで送られてきた注文情報は、すべて自動的にクラウドストレージに保存されるので、社員全員が、パソコンやスマートホンから注文に関する情報をチェックできるようになった。メールを通じてやりとりした情報やスキャンした情報も同様に共有できる。
担当者だけが情報を抱え込むのは過去の話になった。注文を受けているにもかかわらず、商品手配が滞っているとほかの社員がすかさずフォローする。注文が処理されないまま宙に浮くことや、FAXで届いた注文書が行方不明になるようなミスは一切なくなったという。
迅速に注文を処理できる体制が整ったことで、注文を受けてから、在庫状況を確認し、見積りと納入時期を返答するまでの期間を半分程度に短縮できるようになった。物流センターの在庫で対応できる注文数なら即日出荷での対応が可能になるなど顧客サービスの向上につながっている。
「社員には気が付いたことを気にせずにどんどん指摘し合おうと呼びかけています。私も部下に指摘してもらうことで、お客様にご迷惑をかけずに済んだことがありました」(岸本社長)
効果はほかにもある。担当者が不在のときに問い合わせがあっても、オフィスにいるほかの社員がパソコンから情報を確認して対応できるので、顧客を待たせることがなくなった。

リモート会議で5つの拠点のコミュニケーションを活発に

電子黒板を使って行っている研修の様子

電子黒板を使って行っている研修の様子


新本社ができたことで、三宝化成の拠点は、八尾市内の物流センターを兼ねる旧本社と第2物流センター、東京支社、中国・上海の支店をあわせ5つになった。半分近い社員は旧本社に勤務している。効果的にコミュニケーションを取るためにリモート会議を増やそうと、新本社で大型の電子黒板を導入した。電子黒板は研修や顧客向けのプレゼンテーションなど多目的に使用している。

デザイン強化の人材獲得にもプラス効果


社内のICT化に積極的な姿勢は若い人材の獲得にも効果を発揮している。今年3月には、デザイナーを含む20代から30代の男女5人が入社した。これまで社員の年齢構成は40代以上に偏っていたが、新戦力の加入でバランスが良くなった。
「先を見据えたビジョンを打ち出していることが採用活動にもプラスに作用しているように思います」(岸本社長)。

三宝化成の商品サンプル

三宝化成の商品サンプル


金型製作から請け負うオリジナル容器の制作にも力を入れる。受注の中でオリジナルが占める割合は現在、35%。デザインは外部に発注することが多かったが、今後は、できるだけ内製化を進める。デザイナーを採用したのもその意識の表れだ。商品の付加価値を高めていく上で、デザインが果たす役割は大きくなるとにらんでいる。
「時間短縮とクオリティ向上の両立を実現できるのがコンピュータシステムです。これまで以上に取引先をお待たせしない体制を作っていきたい。午前中にショールームに来ていただければ、サンプルを見ながらその日のうちにデザインを決めて試作にかかることもできるようにしていきたい」と岸本社長は先を見据える。
ネットワークシステムを活用した物流センターの改革も検討していきたいという。自動化の割合を増やすことで社員の負担を減らすと同時により迅速な出荷につなげることができる。
国連が定めたSDGsを経営戦略に取り入れる企業が増える中、ボトル・容器に携わる企業として地球環境への意識をこれまで以上に高めていかなくてはならないとも考えている。生分解性プラスチックを素材にした容器などの商品開発に取り組んでいきたいという。
ICTを活用して好循環を生み出している三宝化成。新しいものづくりのロールモデルをどう構築していくかに今後も注目したい。

会社概要

会社名

三宝化成株式会社

本社

大阪府東大阪市横枕南4-24

電話

072-920-7725

設立

1977年10月

従業員数

27人

事業内容

標準規格容器、理化学研究用容器、工業製品容器、洗剤容器、トイレタリー容器、コスメティック容器など包装関連商品の企画、製造、販売

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