事例集

2021.03.31 06:00

3D-CAD活用で革新的なものづくりに挑戦するプラント機器・設備製造のサン工業(山口県)

3D-CAD活用で革新的なものづくりに挑戦するプラント機器・設備製造のサン工業(山口県)
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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


匠の技で勝負してきたものづくり中小企業が、3D-CAD(3次元設計支援ソフト)を導入することで、持ち前の技術力、機動力、対応力にさらに磨きをかけている。 社員5人の山口県山陽小野田市のサン工業の取り組みは、ICT技術を活用するトップの決断力と実行力があれば、企業の規模が小さくても戦っていけることを示している。
サン工業は2000年、当時、25歳だった岩永巧社長が、「脱サラ」して立ち上げたプラント機器・設備の製造会社だ。職人の技によるクオリティファーストを理念に、納期の厳守、スピーディな対応、人の手でしかできない加工にこだわりを持っている。特に強みを持つのは溶接技術。セメントサイロ、テーブルコンベヤ、破砕機用の架台、解砕機のフレームシュートといったさまざまな設備をオーダーメイドで年平均50件製造している。社員数がわずか5人とは思えない高いパフォーマンスを生み出す背景にあるのがICTツールの積極的な活用だ。
同社の本社・工場は、山口県山陽小野田市と宇部市にまたがる丘陵地に整備された小野田・楠企業団地に立地している。交通アクセスが良く山陽自動車道のインターチェンジ、国道2号線に近い。延床面積約440平方メートルの工場にはクレーン、プレス機、ベンディングローラー、カッターマシン、ボール盤などの設備が並ぶ。
岩永社長は、ここ数年、先を見据え、品質をさらに追及したうえで、無駄を削減し、作業工程を効率化するにはどうすればいいか自問自答していたという。

セメントタンク×7基の製作。陸送の制限により分割構造。

セメントタンク×7基の製作。陸送の制限により分割構造。

製造工程を劇的に変えた3D-CADとの出会い


発注先からの設計図を基に加工、組み立てをする場合、材料を手配した後に、不具合がないかを確認しながら作業を進めていかなくてはならない。事前に設計図を徹底的にチェックするが、それでも作業の中で手直しや材料の再手配が必要になることがある。最悪の時には設置する段階になって、手直しが必要な箇所が判明することもある。これらのトラブルは納期の遅れや品質の低下につながるだけでなく、費用をどのように分担するかでもめることもある。
「新しい技術を取り入れて課題を解決していかなければ小さな企業は生き残っていけません。でも、その技術とは何なのかを考える中で、2次元の図面を、実物を製作する前にあらかじめ3次元化できれば、大きく改善できるのではないかと思いました」

3D-CADとの出会いを熱くを語る岩永巧社長

3D-CADとの出会いを熱くを語る岩永巧社長


3Dをキーワードに情報を集める中で、2018年夏に参加したリコージャパンの展示会で、岩永社長は求めていたツールと巡り合うことができた。
そのツールとは、生産設備・機械・装置設計のプロセスを重視して開発された3D-CAD(3次元設計支援ソフト)、iCAD SX。当初は、3Dプリンターについての情報を集めようと思って展示会に参加したが、同じ会場で公開されていたiCAD SXのデモンストレーションに目を奪われたという。

装置設計に特化した事業に相性が良かったiCAD SX


iCAD SXは設備・装置設計に特化した3D-CAD。3次元のモデルから部品の形状、寸法、重量なども正確に計算することができる。事前に3次元で設計して「可視化」すれば、2次元の図面では難しかったほかの図面のパーツとの整合性や問題点を、事前に把握しやすくなる。結果として素材の無駄を省くだけでなく製造期間の短縮と品質向上を実現できる見通しを持つことができた。
「2次元の図面から思い描いた3次元の形を円滑に再現できると実感できました。ものづくりを一気に高度化する革命が目の前で起きている。そのような印象とともに、これなら戦っていけるという手ごたえを感じました」と岩永社長は力強く語った。
行動は迅速だった。早速、iCAD SXを導入する準備と手続きを進め、半年後の2019年1月には導入を実現した。だが、設計も担当し、日々、目の前の仕事に追われる岩永社長にとって操作の習熟にあてる時間は限られていた。3D-CADの導入は未知の経験だったこともあり、慣れ親しんだ2次元の設計からの全面移行に1年はかかるとみていたが、半年で切り替えることができたという。

iCAD SXにより正確に短時間での図面解析・検証が可能

iCAD SXにより正確に短時間での図面解析・検証が可能


「操作性が素晴らしいこともあって、自分が思い描いたイメージをデジタルで立体化する作業が本当に楽しく時間を忘れてのめりこむ毎日でした。メーカーのサポートがしっかりしていたこともありますが、明確な目的意識を持って楽しみながら取り組んだことがよかったのだと思います。デジタルの可能性を日々、実感しています」

製造工程を50~70%に短縮できたことで受注件数が増加


サン工業が手掛ける機器・設備は、発注先の工場やプラントに合わせて製造するオーダーメイドが大半を占める。いわばサンプルのない特注品。誰も実物を見たことがなく、2次元の図面から想像力を駆使して、3次元の実物を製造していた。
製造が進んでから問題が判明し、手直しすることは避けなければならない。部品や機器の間の干渉がどうなるか慎重に確認しながら製造を進めていかなくてはならなかった。
そのため、製作・加工に入ってから組み立て・試運転までの期間は余裕を持って設定しなければならず、受注件数も実際の生産力より少なめにしなければならなかった
その課題を解決してくれるのが、製造前にデジタルで完成時の形状を把握できるiCAD SXだった。
予想通り導入の効果は絶大だった。製作・加工に入ってから組み立て・試運転までの期間を50%~70%短縮できた。3Dデータの作成に一定の時間はかかため全体的な工数・時間は変わらないが、設計上の問題点をあらかじめ見つけておくことで材料や時間の無駄の可能性を気にすることなく、自信を持って製作に取り組むことができるようになった。手直しの心配が減って見通しを立てやすくなったことで、その分、受注件数を増やすことができるようになった。

2Dから3Dに移行により具体的に正確に形状を伝えられる

2Dから3Dに移行により具体的に正確に形状を伝えられる


加工内容が事前に把握できるようになったことで、一部の部品を外部に発注しやすくなったことも大きい。これまでは部品の9割は内製で対応していたためその分手間と時間がかかっていたが、外注の割合を増やすことで、効率的に複数の案件を回すことができるようになった。また、新たなサービスとして依頼先の2次元の図面を3次元化することをサポートする「3D設計支援」も始めている。
ほかにもデジタルを活用したさまざまな取り組みに力を入れ、2年前からはホームページを通じた情報発信を強化している。実績紹介のページでは、依頼主から公開の了解を得た一部の製品を、豊富な写真とともに納期や特徴、担当者のコメントをつけて掲載している。

ICT活用のメリットは時間削減や環境改善だけではない


社員は現在、5人。40代の幹部のほか、20代、60代がそれぞれ2人ずつ在籍している。2次元の図面から実物を製造するには、経験に裏打ちされたさまざまな想像力が必要で、通常は一人前になるまで長い時間がかかるが、3D-CADで可視化することで経験の浅い社員でも従来と比べて短い期間で成長し、ベテランと仕事をしていくことができる。 現在は製造スキルの習熟度が低くても、3Dデータを活用すれば今後、スキルを高めていく道筋がみえる。
既に残業時間の削減など労働環境の改善が実現でき、収益も改善されているが、サン工業の進化は止まらない。
ペーパレス化を進め、3次元モデルや報告書などをクラウドにアップロードして社員全員で情報を共有化することや製造現場に大型ディスプレイを設置し、3次元モデルを表示して作業することも検討している。
様々な局面で、ICTを上手に活用していけば、さらに生産効率を高めて利益率を上げていくことも可能になる。

サン工業本社

サン工業本社

ものづくりの価値向上のカギを握る3D-CADの活用


 岩永社長は話す。
「立体化の最大の利点はわかりやすさです。お客様に対しても依頼の相談があってから納品するまでのさまざまな工程でこれまで以上にわかりやすく説明できるようになりました。安心感を持っていただくことは信頼につながりますし、その信頼が新しい仕事につながる好循環を生み出すことができそうです。これからのものづくりの価値向上は3D-CADの活用がカギを握っているといっても過言ではないと思います」
「3D-CAD上で隠れた問題を可視化し、二次元図面では確認が難しい、他図面パーツとの相互・取り合いなどを検証いたします。3D上でシミュレーションする事で素材や加工費を無駄にする事なく、様々な問題を事前に解決することが可能です」

ものづくりの3D化にはメリットが多い。2次元の図面であれば、設計変更をする際に、影響するすべての箇所をそれぞれ修正しなければならないが3D-CADであれば、すべてのデータが関連付けられているので、一部を変更すればすべての図面でそれが反映されるというメリットもある。メンバー間の情報の共有化による業務の効率化、ミスの削減だけでなく、3次元データはCGやVRに活用しやすいことから提案力や営業能力の強化にもつなげることができる。

企業の規模に関係なく、トップの決断と実行力でこれまで想定していなかった取り組みが可能になるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)の醍醐味といえる。
更には、地域企業同士の水平分業という新たなビジネス革新も視野に入り始めた。
DXのモデル企業として、サン工業が山口県のものづくりを先導する役割は今後、大きくなりそうだ。

会社概要

会社名

株式会社サン工業

本社

山口県山陽小野田市大字高畑77番23 小野田・楠企業団地G-2区画

電話

0836-83-8852

設立

2000年5月

従業員数

5人

事業内容

産業用プラント機器製造

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