事例集

2021.03.26 06:00

亡き夫の遺志を継いだ肝っ玉母さん社長、ICT活用で働き方改革を推進 ティエスサンホーム(東京都)

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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


「主人が亡くなった時、周りからは『もうだめなんじゃないか』との噂もあったようですが、残された従業員の為、私自身の生活の為にも『辞める』の選択肢はなく『やるしかない』と決め、何とか今までやってきています。」

東京都稲城市でガス機器のメンテナンスなどの事業を手がけるティエスサンホームの山本美奈子社長は、そう言って笑顔をみせた。会社を経営していた夫を2005年にがんで亡くし、その遺志を継いで15年が過ぎた。

メーカーと契約して給湯器などのガス機器の修理を受託。風呂場やキッチン、トイレなど水回りのリフォームも手掛ける。東京の多摩地区や神奈川県西部の一般住宅を対象に営業を展開。顧客へのきめ細やかなサービスとスピーディーな対応がモットーだ。

メーカー経由で修理の相談があった顧客と連絡を取り、日程を調整して顧客宅に訪問し、故障個所を修繕する。故障の原因を見つけ出し、適切な修繕方法を見つけ出すのは、熟練した技術と経験が求められる。古い機種では修理が難しいものもある。環境性能の高い最新のガス機器も取り扱っており、顧客の要望に応じて交換にも対応する。

稲城市にあるティエスサンホームの本社

稲城市にあるティエスサンホームの本社

信頼が厚く、ガス機器のメンテナンスからリフォームへ拡大


創業は1990年。ガス機器の販売店に勤めていた夫が87年に突然、「独立する」と言い出し、個人営業で事業をスタート。「結婚して2年目。長女が生まれてまだ1年ほどしかたっていなかった時期でした」と振り返る。山本社長にとっては急展開だったが、「信じるしかない」と、自身も勤め先を辞めて事務仕事を受け持ち、仕事に飛び回る夫を支えた。やがて前の会社の仕事仲間も事業に加わり、社員4人で会社を立ち上げたという。

メーカーの信頼も厚く、多くの受注を獲得。ガス機器のメンテナンスだけでなく、リフォームにも事業を拡げ、会社の規模も大きくなった。手狭になった調布の事務所から稲城市への移転を決めた時期に夫のがんが判明した。

「2年間の闘病の末、亡くなりましたが、当時の社員は、昔からのつながりで主人が集めた人たち。技術を持っている人たちはかりなので、どうなるだろうと心配していました。でも、みな辞めずにいてくれました」。経営を引き継いだ山本社長を社員たちが後押しした。

創業時4人だった社員は12人に増えた。社長の二女も事務仕事をサポートしている。社員たちは現場に散らばり、山本社長が売り上げを管理する経営スタイルだ。修理を委託するメーカーも増え、「もっと人手がほしい」と山本社長はうれしい悲鳴を上げる。亡き夫から引き継いだ経営の手綱を緩めず、一歩一歩着実に成長の歩みを進めている。

直帰社員もリモートで出退勤管理


そんな山本社長が効率的な経営管理を進めようと導入したのが、建設業向けのクラウド型の勤怠管理システムだ。

クラウド型勤怠管理システムを導入し、日報や出退勤の集計を効率化させた

クラウド型勤怠管理システムを導入し、日報や出退勤の集計を効率化させた


導入した勤怠管理ソフトは、出退勤の記録や日報、作業ごとの労務費の集計などを一元的に管理するなどさまざまな機能を持っている。クラウド上で管理するため、日報や出退勤の記録もわざわざ会社に出向かずに作業現場や出先からスマーフォンやノートパソコンをネットにつないで送信することが可能だ。

日報管理は手書きからデジタル&リモートで集計し、全員で確認


特に山本社長が重宝しているのが日報の管理だ。ティエスサンホームでは、90年代からパソコンを導入し、顧客管理などに活用していた。社員にも早い段階から一人一台パソコンを配置していたが、日報の作成はずっと手書きで行われていたという。

ガス機器などの部品が整理された倉庫。顧客からの修理依頼にスピーディーに対応

ガス機器などの部品が整理された倉庫。顧客からの修理依頼にスピーディーに対応


「日報には訪問先での修理・リフォームなどの作業内容や売り上げを記入するのですが、それをもとに翌日、売り上げや粗利を表計算ソフトに一つ一つ入力して集計する作業を行っていたんです」。ソフトの導入にあたって、山本社長はシステムメーカーに「日報の集計を自動でできるようにしてほしい」と依頼。日報を自動的に集計する機能をカスタマイズしてもらった。

その機能をつけたことで、社員は毎日手書きだった日報の作成はパソコンでできるようになった。遠方での作業で自宅に直帰する場合はスマホで現場から報告することも可能になった。社員が入力したデータは、自動的に表計算ソフトに反映され、集計される。集計されたデータは社員とも共有し、毎月毎月の業務実績も確認できるようにしている。

これまでタイムカードで管理していた出退勤の記録もパソコン入力できるようになった。毎日の事務手続きでの社員の負担が軽減され、現場での作業に集中しやすい職場環境につながっている。

一方、人手不足を解消しようと、自社のホームページを2020年にリニューアルした。「若い人材を確保したい」と求人募集コーナーをホームページに新設。難しい知識を必要とせずに簡単にホームページを作成できる「おりこうブログ」を活用し、パソコンが得意な若手社員に頼んでリニューアルした。

仕事を探している人の多くは求人サイトを経由して会社のホームページにアクセスし、どんな会社かを調べることが多い。リニューアルでは、会社の強みや職場環境の魅力などをアピール。サイトのリニューアルが奏功し、求人サイトを通じて若手の人材の獲得につなげたという。

働き方改革が、補助金の活用で積極的に推進できた


こうしたICT導入の大きな後押しとなったのは、政府が実施しているIT導入補助金だ。この制度を活用し、正規の4分の3ほどの費用でこれらのソフトを導入できたという。

働き方改革をすすめる山本美奈子社長

働き方改革をすすめる山本美奈子社長


「働き方改革」の推進で、時間外労働の上限規制が中小企業にも適用され、これまで以上に社員の出退勤の管理にも気を配ることが求められている。ティエスサンホームにとっては、最新の勤怠管理ソフトの導入は、今後、適切な社員の労務管理を進めるうえで、大きな“武器”を手に入れた形だ。

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が自社の課題やニーズに合ったツールを導入する経費の一部を補助し、業務効率化や業績アップをサポートする制度だ。中小企業IT導入が進まない背景の一つとして、費用面を課題に挙げる中小企業経営者も少なくないが、補助金の活用によって費用面でのハードルを下げることができる。補助金活用も検討しながらITによる事業の最適化にチャレンジしてみてはどうだろうか。

会社概要

会社名

株式会社ティエスサンホーム

本社

東京都稲城市東長沼2445

電話

042-370-3711

設立

1990年5月

従業員数

12人

事業内容

住宅設備リフォーム、ガス機器メンテナンス及び販売施工

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