事例集

2021.03.24 06:00

世界を目指す川原食品にとって、食品安全マネジメントHACCP対応は必然の道 川原食品(佐賀県)

世界を目指す川原食品にとって、食品安全マネジメントHACCP対応は必然の道 川原食品(佐賀県)
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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

日本を代表する調味料として柚子こしょうを世界に売り出す


世界中の人に日本独自だが世界へ通用する「柚子こしょう」を提供したい。それは、東京の一流シェフが教えてくれた。
川原食品の川原啓秀社長は近年、柚子こしょうを前面に、首都圏の和食、フレンチ、イタリアンなどの有名レストランのほか、百貨店、高級スーパー、グレードが高いホテルへの働きかけを強化してきた。要求水準の高い一流のシェフやバイヤーに認めてもらってこそ、付加価値の高い調味料としてのブランドを確立できると考えたからだ。
その味はミシュランガイドに掲載された東京の一流料理店のシェフも太鼓判を押すほどに認められつつある。シンガポール、香港といった海外での見本市出展を通じてバイヤーからも高い評価を受けているという。航空会社のファーストクラス、ビジネスクラスの機内食にも採用された。

川原食品の川原啓秀社長は近年、柚子こしょうを前面に、首都圏の和食、フレンチ、イタリアンなどの有名レストランのほか、百貨店、高級スーパー、グレードが高いホテルへの働きかけを強化してきた。要求水準の高い一流のシェフやバイヤーに認めてもらってこそ、付加価値の高い調味料としてのブランドを確立できると考えたからだ。

「柚子こしょうは和食の国際的な広がりとともに認知度が高まりつつあります。世界の人たちに醤油や味噌と匹敵する日本を代表する調味料として認めてもらえるよう取り組みを加速していきます」と川原社長は話す。

世界を意識するからこそ、積極的な姿勢が生まれる。今後、国際的な標準に対応したJFS-C規格の取得も目指していく

世界を意識するからこそ、積極的な姿勢が生まれる。今後、国際的な標準に対応したJFS-C規格の取得も目指していく。

「漬ける」技術に特化した100年企業


川原食品は1918年に海産物問屋として創業した。戦後間もない1948年に有明水産の社名で株式会社化し、1956年に川原食品と社名を変更した。佐賀平野で栽培される米を原料にした日本酒の酒粕を使って有明海で獲れた魚介類を材料とする「粕漬け」を100年以上守ってきた伝統の製法で世に送り出してきた。
佐賀市南東の幹線道路沿いにある川原食品の本社は、工場と共に自社製品を直売する店舗「MIFUKUAN(三福庵)」を併設している。建物の外観と庭園は和風のデザインで統一しており、その落ち着いた雰囲気は佐賀市景観賞にも選ばれた。
「本社を訪れた人たちに落ち着いた時間を提供したいという思いでデザインしました。日本の伝統的な食文化をいかに守り伝えていくか、人と社会と自然、3つの幸福をどうすれば調和させることができるのかを日々考えながら事業に取り組んでいます」(川原社長)。

自社で柚子園を運営 材料への徹底したこだわり

自社で柚子園を運営 材料への徹底したこだわり


作るからには品質が高いものを消費者に提供しようと、徹底して材料にこだわっている。
川原食品は自然豊かな佐賀県富士町の山間部で、農薬不使用で野生に近い状態で実生の柚子の果樹園を運営し、「プレミアムシリーズ」で使用する柚子はここから調達している。さらに唐辛子も地元の農家と契約し、在来種を農薬不使用で生産してもらっている。
産地が近いことは、生産の状態をしっかり確認できることに加え、新鮮な材料をすぐに加工できる強みにつながっている。

HACCPに対応したJFS規格-Bの取得目指す


川原食品が柚子こしょうはじめとする自社製品のブランド価値の向上と販路拡大のため、目指していたのが、HACCP(ハサップ)にも関連したJFS規格-Bの適合証明書の取得だった。
HACCPはHazard Analysis Critical Control Pointの略。食品の安全を脅かす、食中毒菌など健康被害を引き起こす危険要因が混入するリスクを見つけ出して管理、記録する国際的な衛生管理手法。2021年6月から食品事業者に対する完全義務化がスタートする。
一方で、JFS規格は、JFSM(一般財団法人食品安全マネジメント協会)が策定した食品の安全マネジメントに関する規格で、日本の食品衛生のノウハウをわかりやすく世界に発信し、日本の食品市場を世界に対応させることを目的にしている。
その規格は、大企業の大規模な食品工場や海外へ大量に輸出をする工場などを対象にした国際標準のC規格と、一般衛生管理に加え、コーデックスHACCPの要求事項をすべて含めた内容が求められるB規格。そして、比較的規模の小さい食品事業者や飲食店が食品安全管理の基礎を構築するためのHACCPの考え⽅を取り⼊れた衛⽣管理であるA規格の3種類がある。
小規模の食品事業者で、JFS-B規格を取得するにはフローダイアグラムの作図などレベルの高い対応が必要になる。川原食品はJFS-C規格より難易度は低く、JFS-B規格の取得によって第三者がHACCPの7原則12手順を実施しているという判断をすることができるHACCP対応をあえて取ることにした。

文書作成の煩雑な作業をICTが解決


だが、全面的にHACCPに対応するには、フローダイアグラムに加え、ハザード分析表、衛生管理表といったさまざまな文書を作成しなければならない。以前から川原食品では4人の社員がそれぞれの文書を表計算ソフトで作成していたが、フローダイアグラムの作図は簡単ではなく、更新作業は滞り気味だった。
「HACCPでは、工程やレシピを変えるたびに更新し、すべての文書で整合性を確保しなければなりません。入念なチェックも必要で非常に手間と時間がかかっていました。これから先ずっとHACCPにかかわっていくことを考えると作成時間の軽減は大きな課題でした」。川原社長は思い悩んでいた過去の状況を振り返った。
課題解決のために相談したリコージャパンの担当者が提案してくれたのがHACCPの作成と修正に特化した企業向けシステムだった。
システムには、図形パレットから図形を選択し、配置するだけで素早く簡単にフローダイアグラムを作成できる機能が備わっている。さらに数回のクリック操作だけで、自動的にエクセル形式のハザード分析表や管理表を出力できる。出力された文書は、エクセル上で編集してフローダイアグラムに取り込み、項目ごとにその内容を反映することも可能だ。その機能に納得した川原社長は、昨年5月にこのシステムを導入した。

システム化で商品企画、お客様対応の時間確保&販路拡大へ


HACCPに関連する情報がフローダイアグラムに集約されるようになったので、誰が変更してもその情報を社員全員で共有することができるようになった。誰でも更新できるので特定の社員に負担が集中することも減った。
「文書作成の負担が減ったことで、新たな商品の企画や市場調査、お客さんへの対応などより企業価値を高める仕事に社員の気持ちを向けることができるようになりました」(川原社長)。
順調にHACCPへの対応が実現できたことで、想定していたよりも半年程度早く目標としていたJFS-B規格を昨年12月に取得することができた。食品安全管理への取り組みを「見える化」できたことで、より強く消費者の信頼を獲得することが可能になり、これまで以上に販路拡大の取り組みを進めやすくなった。


海外への訴求力向上とともに国境を越えたオンライン販売の強化にも取り組んでいきたいという。スタッフの人数が限られた中小企業が、大企業と同等の食品の安全管理手法を導入することは容易ではない。しかし、ICTを活用して効率的に対応すれば、高いレベルで食品安全に取り組んでいることを世界に発信することができる。世界を見据えた川原食品の次の一手が非常に楽しみだ。

会社概要

会社名

川原食品株式会社

本社

佐賀市川副町南里710-1

電話

0952-45-1234

設立

1948年年6月(創業1918年)

従業員数

9人

事業内容

食品製造業

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