事例集

2021.03.19 06:00

正直に王道を行くために不可欠なICT はなおか(徳島県)

正直に王道を行くために不可欠なICT はなおか(徳島県)
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この記事に書いてあること

執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


拡大よりも進化を重視して、現場での情報の共有から情報発信、テレワークによる外部委託などオールラウンドにICTを積極活用している建築会社が徳島県にある。県都・徳島市と今切川をはさんで隣接する板野郡北島町に本社を置く株式会社はなおか。その取り組みは中小企業が効果的にICTを活用していく上でのヒントであふれている。

はなおかは経営理念として「正直に王道を行く」を掲げ、「親切に 丁寧に きっちりと」を社訓とする。施工案件はお客様のこだわりを反映したオーダーメイドの注文住宅がほぼ全てを占める。1997年6月に本格的に住宅業界に参入して以来、建設した住宅は約2500棟を数える。県内の地元住宅会社様の中の新築注文住宅の年間引き渡し件数が16年連続で1位を記録するなど徳島を代表する住宅メーカーとして高い評価を受けている。2018年には家での暮らしが人生の愉しみの1つとなるよう、暮らしに新たな楽しみを生み出すために誕生した新しい住宅ブランド「JOYS」を立ち上げた。

「四国で一番大切にしたい会社」に選ばれたわけは?


2017年に四国4県の研究機関、産業支援機関で組織する四国地域イノベーション創出議会が選出する「四国で一番大切にしたい会社大賞」を受賞するなど四国での存在感も高まっているが、はなおかのビジネスは地元への貢献を重視している。

「徳島に住むみなさんのために、それぞれの思いを反映した住宅を提供したいという思いで取り組んでいます。しっかりとした仕事をすることで、お客様に満足いただき、そのことを口コミで知り合いの方に伝えていただくケースが多くあります。ひとつひとつの仕事の積み重ねが、今につながっています」。創業者の花岡秀芳代表取締役会長の指名を受けて2020年7月に就任した天羽英樹社長は、このように仕事に取り組む姿勢を話した。

2020年の7月に就任した天羽英樹社長

2020年の7月に就任した天羽英樹社長


はなおかの強みと言えるのが、設計段階での徹底したお客様との話し合いと責任施工システムだ。暮らし方や家の方向性、外観や内装、理想とするライフスタイル、予算などの要望をしっかりと聞き取り、ヒアリングの内容と敷地の状況を基に設計士が更に詳細な図面を作成。図面の提案から契約まで約数ヶ月かけた後、提案した図面を基に3Dモデルも使って何回も打ち合わせを行い、お客様の前で設計士が手直しをしながら理想の形に近づけていくという。

3DCADによってリアルタイムにお客様の要望を反映してやりとりを行う

3DCADによってリアルタイムにお客様の要望を反映してやりとりを行う

IBM出身の創業家社員、DXを粘り強く推進


はなおかは3年前からDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させている。その推進役になっているのが創業者の長男、花岡良尚(よしたか)さんだ。

全社のICTをリードする花岡良尚さん

全社のICTをリードする花岡良尚さん


花岡さんは大学院にて技術経営(MOT)を修了後、IBMに入社し、3年にわたってエンジニアとしてIT分野の経験を積み、3年前、はなおかに入社した。はなおかは20年ほど前から、3次元モデルの導入など設計面でデジタル化を進めていたが、建築現場では、主な連絡手段として電話、ファクスを使うなどアナログが幅を利かせていた。施工は常時、80~90件が同時進行している。それぞれの現場や協力先と電話やファクスで連絡を取る作業が頻繁に発生するため、社員の負担が大きくなっていた。伝達ミスに伴うトラブルへの不安もあった。
危機感を感じた花岡さんは、情報を共有化できる施工管理アプリケーションを導入することにした。写真や図面の管理、報告書や工程表の作成に加え、協力業者とのコミュニケーションもグループチャットで行うことが可能になる機能を備えているので、効率的でリアルタイムな意思疎通が図れるようになった。
導入前は、使い慣れていないアプリケーションを導入することによって仕事が滞ることを懸念する声が上がったが、粘り強く現場を統括する担当部署に説明した。デジタル機器の操作の習得をサポートし、デジタル化のメリットをわかりやすく説明することで現場の人が抱く不安と疑問点を取り除いていった。
使い方がわかるとアプリケーションは現場にとって欠かせないツールになっていた。今では、60代のベテラン大工もスマートホンでクラウドにアクセスし、指2本で自在に図面を拡大、縮小するなど巧みに使いこなしているという。

べテラン社員も素早く操作してコミュニケーション

べテラン社員も素早く操作してコミュニケーション


「3年前と比較すると確かにデジタル化は進みましたが、それでも自己評価はまだ道半ばといったところです。デジタル技術は進化が速く、少しでも油断すると取り残されるという危機感を常に抱いています」と花岡さんは気を引き締める。

設計・営業社員全員が発信のホームページの内容は

今から家づくりをする人へのきめ細かな情報が掲載された「はなおか」のホームページ

今から家づくりをする人へのきめ細かな情報が掲載された「はなおか」のホームページ


会社の情報発信に欠かせないホームページの編集には以前から力を入れていたが、さらにコンテンツを充実させて今年1月末に大幅にリニューアルした。
特に力を入れているのが、家づくりや収納、コーディネート術など暮らしに役立つ情報を社員が発信する新コンテンツ「暮らしづくりのレシピ」だ。設計、営業担当社員による建築にまつわる本音トークや、住宅ローン減税など国の補助制度の解説、オーダーメイド住宅のこだわりをお客様のライフスタイルを交えてレポートする記事など読み応えのある内容で、執筆担当者のプロフィルとともに公開している。企業のホームページをひとつのメディアとして育てていく野心的な取り組みだ。
「社員の考え方や思いを積極的に発信することで、ホームページを見ていただいた方に安心感とともに親しみやすさを感じていただけたらうれしいですね。社員にとっても自分の考えを伝えるために文章を作成したり、映像を撮影したりすることはプレゼンテーション能力などのスキル向上につながります。さらにはブランドの形成などホームページの編集を通じてさまざまな相乗効果が見込めます」(花岡さん)

編集業務もテレワーク 社員教育もテレワークにする理由

若手中心の会社に変身し、全員参加で、建築関係の資格取得を推進

若手中心の会社に変身し、全員参加で、建築関係の資格取得を推進


はなおかは、お客様へのサービスとして、注文した住宅が着工してから完成するまでの写真をDVDとアルバムに編集してプレゼントしている。この業務は総務部の社員が担当しているが、負担を軽減するために、テレワークのシステムを導入して、一部の仕事を外部委託に切り替えた。
コロナ禍で、オフィスでのソーシャルディスタンスを確保するため、事務所別館の会議室をサテライトオフィスに変更して対応しているが、今後、在宅勤務に柔軟に対応できるように更にテレワーク環境を整えていきたいという。
ここ10年は新入社員の採用に力を入れていることもあり、20代、30代が社員の6割を占める。社員教育に力を注ぎ、業務に関連した分野を中心に年間100回以上の学習機会を設けている。資格の取得に意欲を持つ社員が多く、指定の資格に対して合格祝い金や資格手当を支給するなど挑戦を後押ししている。71人の社員が保有する資格は、1級建築士、2級建築士、宅地建物取引士、1級建築施工管理技士、損害保険募集人、インテリアコーディネーター、1級建築大工技能士、MBA、MOTなど131件にのぼる。
社員教育にもICTは親和性が高い。技術を習得するための教育用のコンテンツを作成して好きな場所や時間に学習してもらうようにすることも考えている。
「ICTを効果的に活用すれば、同業種、異業種との新しいコラボレーションも企画できそうです。考え方や理念が一致する中小企業との地域を越えた連携も検討していきたい。中小企業がポテンシャルを発揮しやすい時代が到来しているように思います」と天羽社長はICTのさらなる活用を見据える。

健康、教育、ゼロエネルギー・・・なぜSDGs経営推進

はなおかが取り組むSDGsは、具体的な活動を数多く紹介している

はなおかが取り組むSDGsは、具体的な活動を数多く紹介している


2015年9月に採択された国連の持続可能な社会を実現するための開発目標、SDGsを経営に取り入れていることも注目に値する。
SDGsには、健康・福祉、教育、環境などの分野で国際社会が達成すべき17の行動目標が設定され、企業活動の国際標準になりつつある。はなおかでは、「健康リスクの少ない住まいの提供」、「体験学習の提供」、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)への取り組み」、「経済産業省の地域未来選定企業としての取り組み」、「業務へのICT導入」、「行政との防災協定」、「BCP(事業継続計画)の作成」、「とくしま協働の森づくり」など46件の取り組みをSDGsの具体的事例として発信している。
大企業でもハードルが高いとされるSDGsへの取り組みを、中小企業が積極的に行い、発信していく意義は大きい。
地域に根差しながら国際的な視野を持つはなおかにとって、徳島市から直線距離で約100キロの大阪湾ベイエリアで2025年に開催される大阪・関西万博は、更なる飛躍に向けたチャンスになる可能性がある。
はなおかが、さらなるICTの活用によって、どのような進化を遂げていくか注目したい。

会社概要

会社名

株式会社はなおか

本社

徳島県板野郡北島町鯛浜字西ノ須162-9

電話

088-698-1114

設立

1989年7月

従業員数

71人

事業内容

注文住宅、企画住宅、分譲住宅、土地分譲、リフォーム、リノベーション



中小企業診断士監修の建築業の課題診断
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