事例集

2021.03.18 06:00

常にアナログ対応が求められる業界で、クラウドを活用した顧客情報革新を進める四国ビル管理株式会社(徳島県)

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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


吉野川の支流に囲まれたひょうたん型の中洲に広がっているかつて城下町だった徳島市の中心街。四国ビル管理の本社は、徳島城跡を利用した徳島中央公園に近い場所にある。
四国ビル管理は、徳島県内の中小規模のビルを中心に、半世紀以上に渡ってそのメンテナンスを担ってきた。「ビルを衛生的、機能的に利用していただく上で重要なエッセンシャルワークであることを意識して仕事に取り組んでいます。社名に四国と入っていますが、急な要望が入ってもすぐに駆け付けることができるように業務は徳島県内に集中しています」。
父親から社業を引き継いだ2代目の多田英人社長は、ビルメンテナンスにかける思いをそう語る。

ビルメンテナンスは、驚くほど多くのプロに支えられている


ビルメンテナンスの世界は、奥が深い。ビルの衛生環境は、働く人たちの意欲や訪れる人たちの印象にも大きな影響を与える。その業務は建物内外の日常的な清掃をはじめ、環境衛生管理、設備管理、警備、防火、防災、駐車場管理まで多岐に渡る。
個別の業務はさらに細かく分かれている。清掃を例にとってもその対象は建物内の床、天井、内壁、トイレ、洗面所、照明器具からエレベータ、エスカレータ、外壁、窓ガラス、屋上まで含まれる。

ビル内清掃の状況

ビル内清掃の状況


環境衛生管理の業務も空気環境測定、空調装置の清掃、空調用ダクトの清掃、貯水槽の清掃、水質検査、給水管の洗浄、排水管の清掃、ねずみ・昆虫の防除まで幅広い。
電気通信、空調、給排水、エレベータ、エスカレータといった設備の管理はほかの業務以上に専門的な知識も必要だ。それぞれの分野のエキスパートによってビルの安全、快適性、衛生、利便性は確保されているといえる。
医療従事者、公共交通機関の職員と同じく生活を営む上で欠かせない仕事に従事しているビル管理関係者の多くは、アナログ対応が基本なので、コロナ禍であろうと出かけざるを得ない。
地域と密接なかかわりを持つ企業として教育、福祉に貢献していきたいとの思いも強い。
多田社長は地元のビルメンテナンス業界全体の発展に貢献しようと障がい者雇用の促進、研修などさまざまな活動に取り組む一般社団法人徳島ビルメンテナンス協会の副会長も務めている。

紙情報のため経営情報や顧客情報の管理に危惧を感じていた


四国ビル管理は100人の社員のうち、新型コロナウィルス感染拡大の前から本社で勤務する社員を6人にしぼっている。約70人のパートを含むほかの社員は、契約先のビルに自宅から直行し、現場で清掃や設備点検の仕事を終えると本社に寄らず直帰する。派遣先はできるだけ自宅から遠くない場所を割り当てるようにしており、社員は月1回程度の本社での業務報告を除いて基本的に自宅を拠点に勤務することができる。
多田社長は30年以上前から原価計算にパソコンを活用するなどITに強い関心を持ち、数年前から、顧客に関する資料などの文書をクラウドネットワークで保管、共有化するなど経営管理面ではデジタルトランスフォーメーション(DX)を着々と進めてきた。
多田社長を動かしたのは危機管理意識だった。
「顧客データを紙のままで保存しているとオフィス内で場所を取るだけでなく、万が一、火事や地震などの災害でオフィスがダメージを受け、書類が焼損などした時に、事業継続に大きな支障が出てしまいます。それだけにデジタルで文書を保存できるクラウドサービスには早くから注目していました。紙の文書を減らすにはどうすればいいか常に考えています」。

コロナ対策も施したオフィス

コロナ対策も施したオフィス

名刺情報のクラウド化で取引先の数千枚の名刺を会社の財産に


ペーパレス化を進める中で、それでも大きなスペースを占めていたのが、数千枚にのぼる取引先の名刺だった。社員間での名刺の共有もできていなかった。メンテナンスを受託しているビルは60カ所を超える。今後、受託案件が増えれば、名刺は増えることはあっても減ることはない。リコージャパンに相談したところ、提案してもらったのが、複合機と連動した名刺をクラウドで管理するシステムだった。
昨秋に導入したこのシステムは、名刺を複合機でスキャンするだけで、氏名、会社名、電話番号などのデータがテキスト化されてウェブ電話帳に登録され、社員がスマートフォンやタブレット端末、パソコンを使って、いつでもどこからでも必要な顧客の情報を活用できる仕組みになっている。
従来の紙で管理していた時のような、万が一災害にあったらという不安もなくなった。
端末に登録していない電話番号からの着信もウェブ電話帳に登録してあれば相手先の氏名が表示される機能も備えている。顧客の情報は端末に残らないため、情報漏洩のリスクを減らすこともできる。ウェブ電話帳のデータは修正もできるため、取引先の担当者の所属部署や役職などが変わったときも臨機応変に対応できる。
「システムのおかげで、お客様の名刺を会社の財産としてしっかりと守りながら共有することができるようになりました。導入する時に日常の業務をこなしつつ数千枚ある名刺を複合機でスキャンする作業は大変でしたが、使い勝手の良さと比較するとその苦労は十分報われていると思います」と多田社長はにこやかに話す。

ICTの活用は、言葉の壁やコロナウィルスを超えていく


ビルメンテナンス業界全体の大きな課題となっているのが人手不足。コロナ禍が収束すればベトナムなど新興国からの技能実習生の採用も検討したいという。ビルメンテナンスは今後、新興国でも都市化の拡大に伴って需要の拡大が見込めることから実習先としての人気が高く、意欲のある優秀な人材の獲得が見込める。
「これまで外国人を採用したことはなく会社にとっては新たな挑戦になりますが、進化が続くICTを活用すれば、言葉の壁などさまざまな課題を乗り越えていけるような気がします」(多田社長)

四国ビル管理でのICT活用について熱く語る多田英人社長

四国ビル管理でのICT活用について熱く語る多田英人社長


コロナ禍によって消毒や防疫業務へのニーズが高まっていることへも積極的に対応していきたいと考えている。今後、作業マニュアルを作業に従事する人に徹底する上でもeラーニング、ビデオ講習、オンライン講習などでICTを活用する機会は増えそうだ。

重視するのはアナログを支援するデジタル


今後、地元でコロナ禍が拡大するなど在宅勤務を余儀なくされる事態に備えてリモートワークを実施できるシステムを導入し、体制を整えているが、アナログでの対応も大事にしていきたいという。
「高齢のパートの方の中には携帯電話を持っていない人もいますし、現状を考えると一気にデジタル化というのはなかなかむつかしい。ウェブ会議も時間の節約になりますし、コロナウィルスの感染拡大も防げるので確かに便利とは思うのですが、お客様のところに直接顔を出してコミュニケーションを取らなければ気付けないこともあります。不確実性が高い時代ですから、アンテナを張り巡らせてアナログとデジタルの両方で柔軟な対応ができるようにしていきたい」
徳島県は2000年代半ばから、県内での光ファイバー網の整備に力を入れてきた。光ファイバー網の総延長は20万キロメートル超にのぼり、全国トップレベルの情報通信インフラを誇る。この整ったインフラを活用して県はデータセンター、事務処理センター、デジタルコンテンツなど情報通信関連産業の誘致を進めている。山間部の神山町や沿岸部の美波町などの集落では、首都圏のIT系企業のサテライトオフィスが続々と進出している。
DXの進展は、デジタル社会の神経といえる光ファイバー網を整えた徳島県にとってさらに多くの企業を誘致するチャンスにもなる。バランスの良い働き方を求めて首都圏、関西圏などから地方への移転・進出を検討する企業を官民一体となって呼び込むことができれば、徳島市など都心部のビル需要の拡大も今後期待できる。
四国ビル管理が、どのようなビジネスモデルを磨いていくかに注目したい。​

会社概要

会社名

四国ビル管理株式会社

本社

徳島県徳島市徳島町城内6-25

電話

088-655-3113

設立

1966年6月

従業員数

約100人程度

事業内容

ビルディングなど建造物内外の清掃、ガラスクリーニング、カーペットクリーニング、空気設備フィルター清掃、照明器具清掃、貯水槽清掃、空気環境測定、ねずみ・昆虫・害虫などの駆除、電器施設・冷暖房・空調・給排水設備などの運転及び保守管理業務など

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