事例集

2020.11.19 06:00

不屈の精神と元気印の社長のもとでテレビ会議は魔法のコミュニケーションツールとなった

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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


「2019年の台風15号はひどい目に遭いましたよ。2階にある事務所の窓ガラスが割れて、水浸しです。おそらく高波がそこまで来ていたのだと思います」

横浜市金沢区で危険物保税倉庫を運営する玉家運輸倉庫株式会社の児玉聖司社長は、そう言って真新しい事務所の天井近くの壁を眺めた。高波は、おそらく10メートルは超えていたのだろう。記録的な台風は想定をはるかに超える高波とともに東京湾に隣接する事務所と倉庫を襲った。被害は倉庫に保管していた一部の商品にも及んだという。

取材中も終始笑顔の児玉聖司社長

被災から1年あまり。訪れた事務所に被害の爪痕はなく、説明を受けなければ分からないほど修復され、通常通りの業務を続けている。「くよくよしても仕方ありませんからね」と力強く語る児玉社長。その元気と明るさにこの会社の強さがある、と感じた。

危険物保税倉庫は、火災や爆発、有毒ガスなど災害につながる危険性のある製品を保管する倉庫だ。安全性を確保するため建物を平屋に限定され、防火のための空き地を設ける必要があるなど通常の倉庫にはない厳しい基準が設けられている。関税手続きを終える前の化学品を一時的に保管できる。一般にはあまりなじみのない施設だが、日本の経済を支える重要な役割を果たしている。

他社に先駆けて建設した、最新設備の自動倉庫では、各社から預かっている製品は個別にコンピュータで管理され、顧客も在庫確認が出来る。

玉家運輸倉庫では、約1000平方メートルの敷地に約6000トン、ドラム缶で2万~3万個分の化学品を保管できる危険物倉庫を構えている。関税手続き前の製品を保管できる保税機能もあり、海外の化学品メーカーをはじめ約80社から塗料などの石油製品や香料などのアルコール製品などの化学品を引き受けている。

そんな玉家運輸倉庫がテレビ会議専用のシステムを導入したのは2016年のことだ。

運輸部門と倉庫部門の事業所が離れている…悩みの種はコミュニケーション

「ここから離れた横浜市保土ヶ谷区に運輸業を手掛ける事業部があるのですが、そちらの社員たちと接する機会が少なかったのです。もっとコミュニケーションをとらなくてはいけないとずっと考えていました」と児玉社長は導入の背景を語る。

玉家運輸倉庫の運輸事業は1964年に児玉社長の祖父が創業した会社の原点といえる事業だ。1970年から横浜市保土ヶ谷区に拠点を設け、自動車部品などの輸送を手掛けてきた。児玉社長は、倉庫事業が拡大する中、横浜市金沢区の事務所を拠点に経営を指揮し、運輸事業は親族の児玉研人取締役 に任せていた。

Web会議で保土ヶ谷から取材に参加した児玉研人取締役

運輸事業部は金沢区の倉庫から車で30分ほどの距離にある。同じ会社ながら業務内容も異なり、事業部内の雰囲気や社員の気質も異なっていた。社員同士の交流も少なく、近いようで遠い間柄だ。折をみて、保土ヶ谷の事務所に出向いては、社員との懇親を図っていたが、もっと機会を深める必要を感じていた。

社員一人一人が、社会人としての基本行動を身につけ、成長すること。それが会社を元気にし、会社の収益も大きく変える。

そんな中で、児玉社長が始めたのが社員のモラルとモチベーションアップのための社内勉強会だ。

まずは社員向けにノートパソコンを活用することにした。社長がいる金沢区の事業所の社員は、会議室に集まり、保土ヶ谷区にいる社員向けにノートパソコンを一つ置き、社長が話をした。 一般的なテレビ電話のアプリを使ったが、画面が固まったり、音声が途切れたり。画面は小さく、不鮮明。これでは社員たちと肌が触れ合うようなコミュニケーションがとれない。自分の考えをしっかりと伝えることも、社員の表情を読み取ることもできない。

もっと、生きたコミュニケーションを取れるようにしようと、リコーの「ユニファイド・コミュニケーションシステム(UCS)」の導入を決断した。

UCSは、立ち上げると自動的に相手につながり、広角レンズもついている。リコーの専用線を経由しているため、通信環境も良好だ。パソコンのように設定のための面倒な手間をかける必要もない。システムの専門家が身近にいない中小企業にとっては格好のツールといえる。大画面のモニターも両事業部に設置。まるで同じ場所にいるようにお互いの顔が見える環境を整えた。

新たな環境のもと勉強会をスタートした。倉庫事業と運輸事業の社員をそれぞれ20人ずつ2つのグループに分け、月曜日と木曜日午前中の週2回開催している。教材は、会社の経営方針などをまとめた経営計画書とビジネスパーソンの心構えをまとめた用語集だ。社長が経営計画書の中身を説明するとともに用語集から1日3つの用語を選び、その用語について解説。社員は3つの用語の中から1つを選んで感想を話してもらうというものだ。

「説教をするというわけではありません。まずは会社の方針を理解してもらい、社員と価値観を共有することを狙いにしています。感想を聞くと、中には的外れの事を言う社員もいます。理解してないと思う社員もいますが、それがいいんです。回数を重ねるうちに、まじめでなかった社員も、まじめな社員につられるようになる。そうやって社内の一体化につながっていくと思っています」

ちょっとしたことでも、相手の顔を見ながら、すぐ相談できるのがWeb会議システムの良さ

勉強会がスタートしてからもうすぐ5年になろうとしている。基本的な勉強会を何度も実施し実施検証する中で運輸事業部の社員の意識も変化が表れてきた。児玉取締役は「最初は違和感もあったのですが、何年もやっているうちにお互い仲良くなってきました。いままではあまり意識をしていなかったのですが、部内の整理、整頓もしっかり出来るようになりました。運輸事業部ではメールのやりとりもやっていなかったのですが、勉強会を通じて、パソコンなどのITの活用にも取り組むようになりました。何よりもうれしいのは、停滞していた業績が上向きになり好循環を生んだことです」と、部内の意識の変化と効果を実感している。

すぐ使え、五感を駆使できる遠隔地コミュニケーションが持つポテンシャル

UCSのおかげで会議室全体を鮮明に見ながら臨場感を感じながら情報交換が出来る。右は相手側から見たこちらの会議室

もちろんUCSは、勉強会だけでなく、幹部との打ち合わせや会議にも活用されている。今までは電話でのやり取りですまされていたものが、UCSを通じて毎日のように両事業部の幹部が顔を合わせながら意見を交わすようになった。幹部たちにも経営への一体感が醸成され、業績に好影響を与えているという 。

鮮明な画面とクリアな音声、しかも広角レンズなので作業場や事務所の臨場感も伝わる。「人間は五感を駆使してコミュニケーションをすることでお互いの理解が深まる」ということを、玉家運輸倉庫の取り組みから学ばせてもらった。

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに遠隔コミュニケーションの時代を迎え、出勤できないことの代替手段としてテレビ会議の活用が広がっている。活用によって、コスト削減や時間短縮、在宅によるプライベートな時間の有効活用など遠隔コミュニケーションがもたらすさまざまな効果に注目が集まるようになった。これらは、今まであまり意識されてこなかった効果でもある。むしろ、意識はしていたが、みんながスルーしてきた効果かもしれない。

「遠隔地」は、メートルで測れる距離だけではない。経営者と社員、社員同士の間にも存在する。これまでコミュニケーションのとれなかった、あるいは、必要がないと考えていた会社の内外にある“遠隔地”と、新たなコミュニケーション(リアルに近いコミュニケーション)を持つことに、課題を持って取り組んだらどうだろうか。そこから新たなビジネスチャンスや気づきが生まれるかもしれない。

会社概要

会社名

玉家運輸倉庫株式会社

所在地

横浜市金沢区幸浦2-8-16(倉庫事業部)

電話

045-785-0314

設立

1964年9月

従業員数

55人

事業内容

一般貨物自動車運送業、貨物利用運送事業、貨物軽自動車運送事業、倉庫業

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