事例集

2020.11.12 06:00

With コロナ時代は、高セキュリティと新たなリモート空間でビジネス領域が拡大

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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


世界的に広がる新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、在宅勤務を実施する企業が増えている。一方で、在宅勤務を導入したくても導入が難しい業種も少なくない。その一つが厳密な管理が求められる個人情報を扱う仕事だ。2020年4月、政府が緊急事態宣言を発令し、国民に不要不急な外出自粛や休業を呼びかける中、東京都千代田区の社会保険労務士事務所あおぞらコンサルティングの池田直子所長は難しい判断を迫られた。

スタッフを守り、顧客を守る…在宅勤務を導入

「感染拡大を受けて、事務所でも在宅勤務の実施を決めました。しかし、社会保険労務士は顧客企業・団体で働く従業員の膨大な個人情報を管理しています。在宅勤務のために個人情報を外部に持ち出せば、漏洩のリスクが出てきます。個人情報を外部に持ち出さずに作業ができる環境づくりを急がなくてはなりませんでした」

1999年に社労士としての活動を始めた池田所長は、2008年にあおぞらコンサルティング設立。4人の社会保険労務士をはじめ、労使間の紛争解決手続き代行ができる特定社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー、年金アドバイザーなどの資格を持った優秀なスタッフを抱え、きめ細かいサービスを提供している。

パワフルでいて気配りを感じる社会保険労務士事務所「あおぞらコンサルティング」の池田直子所長

パワフルでいて気配りを感じる社会保険労務士事務所「あおぞらコンサルティング」の池田直子所長

社会保険労務士の主な業務は、雇用保険や社会保険、給与計算などの事務手続きの代行、就業規則や人事などの制度構築など。新型コロナの感染拡大で特に影響が懸念されたのが顧客企業の給与に関わる業務だ。毎月の給与の支払いは、企業と従業員との信頼をつなぐ重要な絆ともいえる。遅配はその信頼関係に大きな亀裂を与えることになる。

「たとえ、新型コロナの感染拡大があっても、私たちの事情で給与遅配を起こすことは絶対に避けなくてはなりませんでした」と池田所長は語る。

事務所のスタッフは9人。顧客の数は約30社・団体と社労士事務所の中では、それほど多くない規模というが、それでも従業員3000人を超す大手の顧客も多い。「感染リスクからスタッフを守り、事務所を守るだけでなく、顧客企業を守らなくてはならない」(池田所長)。コロナ対策では、休業に踏み切る企業も多かったが、簡単に業務をストップさせるわけにはいかなかった。

機器やネットワーク環境の優劣が仕事の進行に影響する

業務の効率化に向けて、これまでもIT投資を積極的に行ってきたあおぞらコンサルティングだったが、リモートでの業務は想定外の事態。事務所では当初、リモートワークで一般的に利用されているソフトを活用することにした。従業員の自宅からノートパソコンで事務所内のパソコンにアクセスし、自宅のノートパソコン上で、事務所のパソコンを操作したが、使い勝手が悪かったという。

リモートワークのシステム導入に取り組んだ株式会社「あおぞらコンサルティング」の高橋孝二社長

リモートワークのシステム導入に取り組んだ株式会社「あおぞらコンサルティング」の高橋孝二社長

「ノートパソコンに映し出された事務所のパソコンの画面は解像度が悪いうえ、画面の文字も小さく、作業効率が大幅に落ちてしまいました」と語るのは、株式会社あおぞらコンサルティングの高橋孝二社長だ。「株式会社」は、社労士事務所の業務を多方面からサポート。高橋社長が今回の在宅勤務の実施に向けてシステム導入の先頭にたった。「不測の事態に対応するための窮余の対応でしたが、環境が整備されていないため、事務所での作業なら1時間で終わるものが、1時間半~2時間もかかってしまう状況でした」。

スタッフのストレスもひどく、業務も限定された。リモートワークでの在宅環境が仕事の進行にこれほど影響を与えるとは予想外だったという。そこで、より効率的な在宅勤務の環境を高度なセキュリティ機能を持った本格的なリモートシステムを導入することにした。

スタッフや顧客のために一気に設備を更新

導入したシステムは、インターネット上に仮想の専用線を設定し、特定の人だけが利用できるVPN(仮想専用線)接続の機器や、外部からの侵入を防ぐ高度なセキュリティソフトなどを搭載。Wi-Fi環境も整備した。在宅勤務用のノートパソコン10台に加え、リモート用のディスプレイ5台も導入した。

在宅での仕事も、セキュリティで守られた環境と社内資料を別画面で見ながら作業を行う事が可能

在宅での仕事も、セキュリティで守られた環境と社内資料を別画面で見ながら作業を行う事が可能

リモートディスプレイをノートパソコンに接続することで2画面での作業を可能にした。高度なセキュリティネットワークを通じて、事務所内のパソコンにアクセス。事務所内では、プリントしていた個人情報などのデータをリモートディスプレイに表示し、その画面を見ながらノートパソコンで入力などの業務を行う。遠隔で事務所内のパソコンを操作するので、個人情報を印字したり、データとして持ち出したりせずに在宅での作業ができる。ノートパソコンに個人情報のデータが残らないので、外部漏洩のリスクも解消できた。

あおぞらコンサルティングでは、2020年8月からこのシステムの運用をスタート。スタッフの感染リスクを抑えるため週1~2日、在宅勤務に割り当てている。これまで利用していたモバイルワーク用のソフトに比べ、ノートパソコンに映し出されていた社内パソコンの画面の解像度や操作性も向上。「スタッフのストレスも解消され、今では、在宅での作業も事務所と同じくらいの効率で作業ができるようになりました」と高橋社長は評価している。

リモートワークは、コンサルティング業務の新たな“武器”

あおぞらコンサルティングでは、人事・労務を中心に企業・団体へのコンサルティングも行っている。人事・労務のトラブル相談など企業の機微にかかわる内容にもかかわる。また、介護や育児に関連した人事・労務の制度設計にも精通する池田所長は多くの企業・団体に信頼され、全国を飛び回っている。

打ち合わせのたびに重要書類を持ち運んでいたが、リモートを活用することで、打ち合わせのたびに重い紙の資料を持ち運ぶストレスがなくなり、万一の紛失のリスクも解消された。

Web会議システムによって、従来の枠を超えた共創空間の実現へ

遠隔地にいる池田所長とまた別の場所にいるクライアントと社内の高橋社長の三者会議の準備中の風景

遠隔地にいる池田所長とまた別の場所にいるクライアントと社内の高橋社長の三者会議の準備中の風景

一方、あおぞらコンサルティングでは、リモートワークの環境をさらに充実化させるため、会議用のWebカメラとプロジェクターを事務所の会議室に設置。ネットワークを通じて遠隔地にある顧客との会議や打ち合わせができる環境も整えた。新型コロナの感染拡大で、顧客の中でもテレビ会議が一般化したことへの対応だ。

Webカメラを導入したことで、事務所の会議室全体を相手側に映し出すことができ、複数のスタッフが同席する形での会議や打ち合わせが可能になったという。「再び移動制限が強化されるような事態になっても、これで対応ができるようになりました。Web上で打ち合わせができるのでビジネスのスピードと新たなビジネスへの道筋が見えてきました」と池田所長。顧客とのコミュニケーションの活発化に効果を上げている。

「在宅勤務」「リモートワーク」を新たなチャンスにする時

ここ数年、クラウドサービスの普及や通信の高速化によって、業務の生産性を飛躍的に向上させる環境が整ってきた。従業員の安全・安心を守りながら、在宅でも円滑に業務を進める環境をどう構築したらいいのか。企業の業務内容や予算に応じて、最適なハードやサービスを導入することで、大幅に業務を改善につなげることが可能になってきた。あおぞらコンサルティングは経営者の決断で一気に大幅入れ替えを実現した。先が見えにくい困難な時の決断として大いに評価される。

さらには、場所を選ばないリモートワークは、社内の部署やエリアを越え、重要な遠方の顧客や協力者とのコミュニケーションも可能になってきた。この環境をどう生かしてNEXTビジネスを構築できるかが問われている。コロナで大変な時であると同時にアフターコロナをにらんだ経営者の行動に期待したい。

事業所概要

事業所名

社会保険労務士事務所 あおぞらコンサルティング

所在地

東京都千代田区鍛冶町1-6-15 井門神田駅前ビル2階

設立

2008年

電話

03-3526-4277

従業員数

9人

事業内容

労働保険、社会保険などの手続き代行、就業規則などの各種規程の整備、採用・雇用などの人事管理業務全般における労務コンサルティング

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