事例集

2020.10.22 06:00

シームレスな生産現場が「武器」  3D-CADが成長の原動力

横長の工場の中に楕円形の工程ラインが配置され板金加工→塗装→乾燥→組立で一周回る。
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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


株式会社ニッシンの手塚文紀社長は2008年に義理の父から社長を引き継いだ。就任直後、リーマンショックの激しい逆風が吹き荒れ、会社の業績は下降線をたどった。その年の営業利益は赤字を防ぐのがやっとだった。

「工場の機械のにおいが大好き」という手塚文紀社長

「工場の機械のにおいが大好き」という手塚文紀社長

「8月に社長に就任して、翌月にはリーマンショック。製造業に影響が出たのはその年の12月くらいだったでしょうか。社長に就任したとたん一番のどん底でした。みんなからは『これから先は上がるだけだから』なんて慰められましたよ」と笑う。

ニッシンは1969年の創業以来、板金加工から塗装、組み立てまでシームレスな生産体制を強みに事業を展開。大手メーカーなどから受注を受け、コピー機のサプライテーブルや歯科医院向けの殺菌キャビネットなどを生産する。

埼玉県飯能市の本社工場は、3D-CAD(3次元コンピュータ設計支援システム)をはじめとする最先端の設計体制から板金、塗装、組み立てまで全く異なる生産ラインがきれいに整備され、工場内を一周するように違和感なくつながっている。社内の別々の生産拠点ごとに部品を移送する「横持ち」が発生せず、品質の高い製品を低コストで供給している。

横長の工場の一番奥が製品の塗装乾燥ライン その後組み立てラインへと続く。

「納品した製品に傷などの不具合があった場合、複数の企業を介すると、どこで不具合が出たのか突き止めることが難しいことがあります。しかし、シームレスな生産体制で最後まで責任をもって対応ができます。その点も当社のアピールポイントの一つといえますね」と手塚社長は胸を張る。

製造現場と取引先を結びつけた3D-CAD

縁あってニッシンに入社した手塚社長。それまで勤めていた農業機械メーカーでのサラリーマン生活は一変した。「決算書は読めないし、資金繰りとか減価償却って何? というところからスタートでした。まあ、こういったものはあまり時間をかけずに理解できますが、ものづくりは根本が分からないとできない面があります」と手塚社長。それでも、「工場の機械のにおいが大好き」ということもあり、自身では意外とスムーズに新たな環境に入って行ったという。

リーマンショックからの回復・成長には、サラリーマン時代に経験が多いに役立った。それが3D-CADの導入だ。

もともと大学時代は機械科で設計を学び、農業機械の会社でも設計の仕事を担当し、3D-CADを操作しており、その有効性をよく認識していた。今でこそ3D-CADは一般的になったが、当時はまだ出始めのころ。板金業界でも先進的な取り組みだった。

3D-CADは、平面に書かれた設計図面を3次元の空間に立体的な形状に描き出すシステムだ。平面の設計図を立体的に描き出すため完成品をイメージしやすいメリットがある。製品が設計通りに機能するかどうかといった検証もしやすくなり、顧客へのプレゼンテーション力も飛躍的に増す。

「大手の取引先でも3次元を使っているところが多く、導入によってやりとりがスムーズにできました。3次元のデータをもらうことで、試作のスピードも上がりました。また、取引先から受け取ったデータを検証しながら当方からもっと低コストになる設計を提案することもあります。提案を受け入れてもらうこともよくあります」と手塚社長。取引先との信頼関係の構築や受注拡大に大きな効果を上げた。リーマンショックから10年あまりが過ぎ、ニッシンの2019年度の売上高はリーマンショック時の約2倍にまで成長した。3D-CADをはじめとするICTの活用が大きな原動力となった。

先を見据えた環境経営が新たな危機の楯になる

ニッシンのもう一つの大きな特徴は、環境経営に熱心に取り組んでいることだ。

ニッシンのもう一つの大きな特徴は、環境経営に熱心に取り組んでいることだ。中小企業では、環境経営の重要性は分かっていてもなかなか取り組めない現状があるが、ニッシンは高い品質を維持するために、国際的品質マネジメントシステムISO9001を取得。さらに、環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステムであるエコアクション21を取得した。

環境マネジメントシステムといえば、国際標準化機構ISO14001が思いつくが、中小企業にとっては取得のハードルが高い。ISO14001を参考にしながら中小企業が取り組みやすく内容にしたのがエコアクション21だ。

二酸化炭素(CO2)などの排出量を把握・管理し、CO2ゼロを目指すことや、環境法令順守どのコンプライアンス管理の徹底を図ることが求められ、ニッシンでは、施設内をすべてLED照明に変えたり、環境負荷の少ない電力を利用したりするなど環境対策を強化した。また、有害化学物質管理(CMS)にも取り組み、有害化学物質の排除にも力を入れている。

環境を重視する企業であるかどうかは世界的にも重要な投資基準の一つになっており、すでに日本の大手企業の大半が環境経営に舵を切っている。その中で、取引先企業の環境スタンスも注視し、下請け企業でも環境対応がしっかりしたところと取引する傾向が強まってきた。こうした動きにいち早く着目し、対応に動いた経営視点は多いに参考となる。

雇用面では、働いている従業員のほとんどが地元で、地元の雇用に貢献すると同時に、これから本番の「働き方改革」を推進する。

雇用面では、働いている従業員のほとんどが地元で、地元の雇用に貢献すると同時に、これから本番の「働き方改革」を推進する。外国人労働者の雇用でもベトナムに定期的に行って採用活動を行っており、ニッシンで腕を磨いて祖国に貢献するというサイクルができ上がっている。

アフターコロナの時代に入り、中小企業経営は一段と不透明感が増している。リーマンショックを上回る経済への影響も懸念される中、先を見据えたニッシンの経営対応は、多くの中小製造業の参考になりそうだ。

企業概要

会社名

株式会社ニッシン

所在地

埼玉県飯能市落合500-1

電話

042-974-1161

設立

1969年5月

従業員数

49人

事業内容

設計(価格低減のご提案等)、プログラム、精密板金加工(パンチプレス、レーザー加工曲げ加工、各種溶接)、塗装(金属焼付塗装、紛体塗装)、組み立て、シルク印刷

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