事例集

2020.10.15 06:00

リモートワークがケアマネジャーを残業から解放  帰宅時間が3時間も早く

特別養護老人ホーム「恵愛荘」
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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


茨城県坂東市の社会福祉法人清風福祉会(田中敏男理事長)が運営する特別養護老人ホーム「恵愛荘」は、居宅介護支援サービスを担当するケアマネジャーの負担を軽減するため、施設のパソコンを遠隔で操作できるシステムを導入した。居宅介護支援を担当するケアマネジャーは利用者宅の訪問で外回りが多い仕事だ。リモートワークの導入で、介護記録の入力などを遠隔操作で入力できるようになり、残業時間を大幅に縮減することができた。

利用者宅を訪問後に帰社して入力作業、業務の効率化に苦心

以前は大変だったと語るケアマネジャーの荒木正明さん

「以前はなかなか定時に仕事が終わらず、20時ごろまで残業することも少なくありませんでした。自宅に仕事を持ち帰ることもありましたが、リモートを導入したことで、定時に帰宅できるようになりました」。恵愛荘の居宅介護支援事業所責任者でケアマネジャーの荒木正明さんは語る。

1972年に開園した恵愛荘は、約100床の特別養護老人ホームのほか、ショートステイやデイサービスなどの介護サービスを展開する。近隣には認知症の専門治療が行える総合病院があり医療面でも連携している。早期から高齢者福祉を担ってきた施設として、地域の信頼を集めている。2002年から居宅介護支援事業をスタートさせ、施設のある坂東市だけでなく、常総市や境町、八千代町など3市2町にも介護保険サービスを提供している。 荒木さんは、施設で居宅介護支援サービスを担当する唯一のケアマネジャーで、利用者37人を受け持っている。

介護を必要とする高齢者の自立をサポートするケアマネジャーの仕事は複雑かつ多岐にわたる。介護保険サービスを利用する高齢者やその家族からの相談を受け付け、課題を分析し、適切なサービスを提供するための「ケアプラン」を作成する。また、利用者とサービス事業者とをつなぐ調整役としての役割を持つ。また、計画通りのサービスが提供されているかどうかをチェックするほか、介護保険の給付管理なども行わなくてはならない。

特別養護老人ホームなどの施設に入所する100人規模の高齢者を受け持つ施設担当のケアマネジャーに比べて、居宅担当のケアマネジャーは、受け持つ利用者の数は少ないものの、提供できるサービス内容をまとめたケアプランを作成するため、利用者ひとり一人のご自宅を訪問。利用者や家族の相談を受けたり、利用者の心身の状況について聞き取りをしたりしている。

荒木さんの場合、1カ月のうち10日は保険請求の書類のとりまとめに時間をとられるため、それ以外の日に利用者宅を訪問しているが、「1日に3~4件を回ることもよくあります」と話す。施設から利用者宅まで片道で30分ほど要することもあり、移動にも時間がかかる。訪問後、施設に戻って施設のパソコンに向かい、利用者とその家族から聞き取りした内容を入力。どのような介護保険サービスを提供できるかケアプランの作成するための作業などを行っている。定時の勤務時間だけでは間に合わず、残業したり、自宅に仕事を持ち帰ったりすることも少なくなかった。

車の中でリモート入力、空き時間を有効活用

ケアマネジャーの負担軽減に苦心した坂入安夫事務長

ケアマネジャーの負担軽減に苦心した坂入安夫事務長

「いかに居宅介護担当のケアマネジャーの負担を軽減するかは、施設としても大きな課題でした。(以前から取引のあったリコージャパンの営業担当者と)施設の業務の効率化に向けてICTの活用を検討する中で、『すぐにできる改善策』として持ち上がったのが、居宅担当のケアマネジャーのリモートワークでした」と恵愛荘の坂入安夫事務長は語る。

さっそく、ノートパソコンで、施設のパソコンを遠隔操作できるシステムを導入。すると、荒木さんの業務環境は一変した。

「利用者宅での相談内容や聞き取りの作業を利用者宅の移動の合間にできるようになりました。施設に戻って記録する作業を大幅に減らすことができました」

利用者宅の訪問では打ち合わせが早く終わったり、予定時間よりも早く利用者宅に到着したりして空いた時間が生じる。空いた時間を有効活用して、車の中などでノートパソコンを開き、聞き取りの記録などを入力。それまで、手帳やノートに書き込んでいたものを転記していたが、そのまま遠隔で施設のパソコンに入力できるようになった。

今ではどこでも作業ができ、訪問先で説明も可能

今ではどこでも作業ができ、訪問先で説明も可能

また、ノートパソコンは利用者へのサービス内容の説明にも有効活用している。在宅介護の場合、介護保険を活用して提供できるサービスの種類が多い。利用者や家族が要望する介護サービス内容を提供できるかどうか、利用者の介護状況で、どのような介護サービスを組み合わせて提供できるかなどの試算をリモートで調べ、その場で提示することもできるようになった。利用者宅に戻って介護点数などを計算した後、改めて利用者宅に電話で教える手間も省くことができた。

「自治体によっては、独自に高齢者向けの支援をしているところもありますが、意外と利用者が知らないことがあります。そんなサービスもインターネットで紹介することもできるようになり、利用者の利便性向上にも役立っています」と荒木さんは説明してくれた。

低コストで実現できた業務の効率化

介護保険サービスでは、利用者や家族のさまざまな個人情報を管理する。リモート作業では、情報の管理を心配する向きもあるが、セキュリティー性の高いVPN(仮想専用線)接続を利用しており、外部からの侵入を防ぐことができ、安全性も担保できる。しかも低コストでの導入が可能だ。

恵愛荘が今回のリモートワーク活用で、導入したのはリモート操作が可能なノートパソコンと、携帯用のWi-Fiルーターだけだ。業務の効率化によって、荒木さんは定時に帰宅できる日が増え、残業時間は1日平均で3時間も少なくなった。毎月毎月の残業代を考えると、リモートワーク導入による施設のコスト削減効果は非常に大きい。

新型コロナウイルスの感染拡大で大きな注目を集めたリモートワークだが、導入の大きな目的は、社員の感染防止のため、在宅勤務を可能にさせることだった。
だが、外勤の場合は、利用者を回るときの空き時間を活用することで、大幅な業務時間の改善が可能。さらには、利用者やそのご家族にその場で情報を伝えることができる。恵愛荘の取り組みはその好例といえる。

常態的になっていた残業から解放された荒木さんは、「夕食を一緒に食べることができ、家族との接する時間が取れるようになりました」と喜んでいる。高齢社会に突入し、介護保険事業の役割は今後、さらに高まることが予想されている。一方で、労働人口の減少を背景に働き手不足も深刻だ。恵愛荘の坂入事務長は、「今回のケースに加え、ICTを活用して施設の業務の効率化に今後もチャレンジしたい」としており、今後の取り組みも注目されそうだ。

事業概要

事業所名

社会福祉法人清風福祉会「恵愛荘」

所在地

茨城県坂東市沓掛337

電話

0297-44-3320

設立

1972年6月

従業員数

62人

事業内容

特別養護老人ホーム、デイサービス、ショートステイサービス、居宅介護支援事業などを展開

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