事例集

2020.09.24 06:00

「人間力」を発揮させるICTを  介護利用者や職員にやさしい施設づくりを追求

認定特定非営利活動法人ぬくもり福祉会たんぽぽ
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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。



埼玉県飯能市の認定NPO(特定非営利活動)法人ぬくもり福祉会たんぽぽは、在宅・通所介護や看護・子育て支援などのサービスを展開している。公民館で1986年に開催された女性問題を考える講座をきっかけに桑山和子氏が市民の草の根活動から誕生した組織だ。「困ったときはお互いさま」を経営理念に掲げ、介護や子育てに悩む女性たちを支えている。

1994年にNPO法人を取得し、2000年からは介護保険法による事業所としての活動をスタート。女性目線で、困っている方に必要な支援を行うために、通所介護「ぬくもりの館」、訪問介護「たんぽぽ訪問介護」、居宅介護支援「ケアプランたんぽぽ」の3事業所を皮切りに、グループホーム「メゾネットたんぽぽ」、通所介護「田園倶楽部」、屋外型サロン「ソーシャルファームフラワーガーデン」、ショートステイ「リゾートたんぽぽ」「放課後児童クラブ」などを次々と開設。その間に毎日介護賞特別賞やシニア活躍推進宣言企業の認定等を受けた。「メゾネット」「リゾート」と冠した施設の名前は、行ってみたくなり、行くと楽しい、という思いを込めて一つ一つネーミングしたという。

現在は、これらの幅広い事業分野で250人の職員が活躍している。2017年には「多様な働き方実践企業」としてゴールドの認定を受けている。

これらの展開を行う中で 「介護の現場には効率化したい作業が山ほどあります。ICTを活用できるところはすぐにでも活用したい。そうすることで、利用者のサービス向上に人を振り向けることができます」。市民活動を昇華させ、1994年にこの施設を設立した桑山和子会長。介護の現場へのICTの活用に積極的だ。介護関連の展示会にも足を運び、最新の機器やサービスをチェックしている。

介護現場は慢性的な人手不足に悩まされ、効率化が急がれている。利用者の送迎、食事や入浴、洗濯、レクリエーションや健康管理…。個性が異なる利用者一人ひとりに気を配りながら接しなくてはならない。デイサービスの利用者が持ってきた荷物も紛失しないよう一つ一つ職員が管理する。細かな仕事の積み重ねが業務の効率化を阻んでいる。

「こうした細かい作業の一つ一つを代替できるようシステムはできないか。介護の分野はICTの活用の余地は非常に大きい」と桑山会長は指摘する。

現場に寄り添う介護支援ソフト 「記録」の作業を軽減

介護の分野でICTが大幅な業務改善に貢献しているのは、介護保険サービスのための事務手続きの分野だ。

介護保険請求の手続きには、膨大な書類の作成が求められている。 「とにかく介護は記録、記録、記録。記録をしっかりしなくてはいけないのです」と桑山会長は語る。

介護保険サービスでは、ケアマネジャーが1カ月単位で個々の利用者の介護保険サービスの利用予定を作成する。さらにサービス提供後は実施内容を確認し、国民健康保険団体連合会に必要書類を送付する。ケアマネジャーが作成した利用予定に対して、どんなサービスが提供されたか、提供したサービスに適合する介護保険請求が行われているか、その整合性も整えなくてはならない。

ぬくもり福祉会たんぽぽでは、デイサービスや訪問介護・看護の利用者は約500人に上る。デイサービスの利用者は250~300人。サービスを受けた一人ひとりに細かい記録が残される。介護支援システムを2002年に刷新したが、採用する決め手となったのはある一つの機能だったという。

「当時、事業所に利用者の情報を送信していたのですが、事業所によって違う内容をFAXする必要があり、手作業で送付していました。それを自動的に仕分けしてシステムから直接FAXできる機能があったのです。この機能によって手間が大幅に省けたと同時にFAXを送る紙を印刷する必要もなくなり紙の節約にもつながりました」と、岡田尚平経営管理部長は振り返る。昔の話ですが、現場の事を知り対応してくれたシステムの感動を今も覚えているそうだ。

ぬくもり福祉会たんぽぽでは、最近も利用者と職員に寄り添ったICTの活用にチャレンジしている。介護職員によるタブレット端末を活用した介護記録の入力は実施している。しかし、施設を利用する高齢者を効率的に送迎するシステムの導入は、もう一歩きめ細かさに欠けると見送った。

利用者と職員に寄り添ったICT導入に期待

通所介護「田園倶楽部」は田園の真ん中にある

埼玉県初のNPO法人として地域に密着した活動を続けてきたぬくもり福祉会たんぽぽは、2013年には埼玉県のNPO法人として初めて、税制上の優遇措置を受けられる「認定NPO法人」の“資格”を得ている。市民の「困りごと」に真正面から向かい合い、市民による助け合いの精神を尊重した活動がこうした評価につながっている。さらには、財務内容の健全化にも努力し、自己資本も40%超える優良法人になった。

介護の現場へのICTの活用を模索する桑山会長だが、「福祉の仕事には『人間力』が大切」、人が持つ気付きや優しさといった「人間力」に寄り添ったICTが介護分野で重要であり、それが実現できる時代になった、と期待感を膨らませる。IoT機器やロボットなども視野に入れながら、積極的に導入していく考えを示した。

高齢者人口が増加し、労働人口が減少する中、介護事業を取り巻く環境は厳しさが増す。介護事業のICT化が必要だが、現場の、見た目にはわずかに見える負担を軽減するきめ細かな機器やサービスが登場することが期待される。その中で、ぬくもり福祉法人たんぽぽがどんなICT化を進めるのか注目される。

法人情報

法人名

認定特定非営利活動法人ぬくもり福祉会たんぽぽ

住所

埼玉県飯能市落合290-4

電話

042-972-8611

設立

1999年5月12日

従業員数

250人

事業内容

通所介護、訪問介護、訪問看護、居宅介護、グループホーム、ソーシャルファーム、ショートステイ、児童保育

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